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とにかく、その“運命のつがい”かどうかのDNA検査を本当にしたというのなら――あるいは偽造かもしれないだろう、さすがにそこまで疑う――ソンジュさんは、いつか僕のうなじに触れたということになるじゃないか。
しかし、僕のうなじはそうそう簡単には触れられない上、そもそもオメガ属の本能として僕は、うなじに触れられたらそれだけで強い警戒心を抱くわけだ。――そんな場所に触れられた(何かしらを擦り付けられた?)記憶が、僕にないのはおかしい。…下手に性器をどうこうされるより、何かしらをされていの一番といっていいほど印象に残るような場所が、オメガ属のうなじである。
そうならやはり、これは偽造書なんじゃないだろうか?
やっぱりソンジュさんもモウラと同様、ケグリ氏とグルで、僕を騙して利用しようと…――。
「…ユンファさん」
「…………」
あるいは…まあそれはないだろうが、ケグリ氏たちの協力の元ならば――僕が眠っているときに、僕のうなじから検体を取られた、ということならばありえるにはありえる。……ただ、そんなことにケグリ氏が協力するとは思えない。――彼がソンジュさんに協力するとしても、せいぜいが偽造書を僕に信じ込ませようというくらいだろう。
「………、…」
眠っている、とき…――か。
いやたしかに、僕が眠っているときなら――僕のうなじから検体を取ることはできるはずだ。…当たり前だが、眠っていれば僕の意識はそこになく、どこまでも無防備な状態なのだから。
もし、だが。
かなり仮定の話ではあるが…僕がノダガワの家以外で無防備に眠ってしまったことは…正直、一度だけある。
思い当たる節が、その記憶が――僕には一つだけあるのだ。
僕はソンジュさんの、その綺麗な水色の目を、ど こ か で 見 た こ と が あ る よ う な 目 だと思ったのだ。
それに、彼のホワイトブロンドの髪も記憶にあるような、…ないような…曖昧だが、どこかで僕ら、会ったこと…――なんて、思っていたが。
「…混乱なさるのは、まあ…当然のことかと」
「…………」
もしかして、彼、…“カナイ”さん…――?
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