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                 ふー…っと澄まし顔でまた新しいタバコを吸っているソンジュさんは、胸の下に腕を、その腕に片肘を置いて、どこかケグリ氏を見下ろしているように軽く顎を引いている。――ケグリ氏はもう彼の顔を見られないようで、ギョロギョロと目をあちこちに泳がせつつも。   「…っわかりましたよ、――ただ、コイツは“契約”の期間が満了するまでは、私の性奴隷に違いないんですからね。…なあユンファ、わかったな。私を裏切ろうものならお前…」    と、僕にキッと振り返るケグリ氏の言葉のさなか、ソンジュさんは冷ややかに。   「おや。これはこれは…この期に及んで脅迫ですか。」   「…っ脅迫、ではなく。――()()()()()()のはすべてコイツの意思で、」   「そうですか。残念ながら、私にも()()()()()()()はできませんので、その真偽はわかりかねますがね。――構いませんよ。千日間の期間満了まで、ユンファさんは貴方の性奴隷ということで結構です。…あくまでも私は、彼をケグリさんからお借りする立場だと、これでも心得ておりますので。」    そう涼やかに言うソンジュさんへ、ケグリ氏は負け惜しみの笑顔を向けている。   「…ふんっ…じゃあ、貴方のところへユンファは、()()()()()()()()()()()()()よ。――もう好きなようにすればいい。孕ませようがなんだろうが、もう毎日たっぷり犯して可愛がってやってくださいな。コイツは毎日ちんぽ咥えないとまんこヒクヒクさせて寂しがる、ド変態のマゾ奴隷ですから。…いや、まんこどころかアナルにも口にも常にちんぽを咥えたい淫乱なんですわ、何ならアンタに、ユンファの性感帯をお教えしておきましょうか?」   「…わかりました。――その話は後ほど、念のためじっくりお聞かせください。…」    ケグリ氏のその皮肉たっぷりなセリフにも、微笑んで頷きながら涼やかに了承したソンジュさんは――ここでやっと、まだ椅子に座ったままの僕をそっと見下ろし、…サングラスの下で、すっと目を開けて僕を見た。   「…さてユンファさん。…ご主人様がこうおっしゃっていますので――構いませんよね。」   「……、あ、はい、…まあ、はい…」    そしてソンジュさんはそう確かめてくるが、鮮やかなまでにケグリ氏をやり込んだ彼に僕は、もうこうとしか言えない。  逆らうつもりなど端からなかったにせよ、確実に敵に回したら怖い人であることが今によくわかっている。――ましてやご主人様であるケグリ氏がよいと言うなら、やっぱり僕は「はい」としか言えないのだ。    正直言うと、僕はあまりにも突然のこの展開にまだついていけていない。――ただわかるのは、僕は本当にこのままソンジュさんに着いて行き、彼の家に少なくとも一週間かあるいは数日間か、なぜか行かなければならない、ということである。――いや、なぜかというより…ソンジュさんもやはり、僕を性奴隷にしたいのだろうが。   「…ということですので…――ケグリさん。」    ほとんど吸っていないタバコを灰皿にもみ消し、ソンジュさんは、ふう…とケグリ氏へ顔を戻した。   「…なんですか」と、ケグリ氏は不満げながらも応じる。  するとソンジュさんは、にっこりと何かほの暗い微笑みを、その艶めいた唇にたたえ。   「…なあ……」    低い声で、そう笑うと――ソンジュさんは床を、そのシャープな顎でしゃくって示した。           「…まずは、土下座して謝れ…、ククク…」             

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