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             ソンジュさんは俯いた僕の顔を覗き込み、苦しげにこう言った。   「……確かに、金を払えば誰でも、貴方とセックスをすることはできる――でも、ユンファさんの体に値段が付いていたんじゃありません…」   「…………」    そう叱るように――それでいて優しい声で、ソンジュさんは根気良く、僕に言い聞かせているように。   「…貴方の性奉仕によって発生した金銭の値段は、その実、ユンファさんが努力して手に入れた素晴らしいテクニックなど、()()()()()()()()()()()()()()()()です。――間違っても、貴方ご自身の値段ではありません。…人ならば誰しもに、値段なんて付けることはできないのです」   「………、…」    僕は…――ケグリ氏たちとはまるで逆のことを言うソンジュさんに、はっきり言って、どう反応したらよいのかまるでわからないでいる。   「あれは…決して貴方の肉体や、精神の値段ではありません。――ユンファさんが売っていたものは、人を楽しませるためのサービス…人が買っていたのは、貴方の労働力です。…何も変わらない。世の中で働いている人々と、貴方が売っていたものは…何も変わらないのです。」   「…………」    そこでソンジュさんは、ガバリと僕を抱き締めてきた。  そして泣きそうな声で、こう言った。   「…ましてや十円だ、無料だなんて、――そんなこと間違っても言わないでくれ、…グゥ…なんて忌々しいのか、公衆便所…? クッ…誰に言われたんだか知らないが……、いや…ユンファさん」   「……はい…」   「誰がそんなことを言ったのか、俺に教えてください」   「…………」    なぜ、そんなことが知りたいのだろう。  僕はあんまりにもぼーっとしていて、推測することが上手くできない。   「…ケグリ氏(ご主人様)、ですが…」   「…なるほど。教えてくださってありがとう…、グルル…」   「………、…」    唸ってる、いや――まさかな。  まさか…ケグリ氏に報復しようなんて、まさか。  まさか…――いや、それらしい理由を言われ、拒否されただけだ。……つまり結論として、ソンジュさんは僕を抱きたくない、というだけのことだろう。   「……あの…つまり、僕を抱きたくないということなら、もちろん抱いていただく必要は……」   「だから、そうじゃないんですよ…――ユンファさんは、いいんですか。…()()()()()()()()()なんです」    する、と離れ、確かめるように、僕の目を真剣に見据えてくるソンジュさんに、僕は虚ろな頭のまま、こくりと頷いた。   「…もちろんです。どうぞお好きになさってくださ…」   「本心で、いいんですか。――俺と本心でセックスしたいんですか、ユンファさんは。…」   「……、……」    ソンジュさんは、なぜ怒ってまで、こんなに僕にその可否を問うて確かめてくるのだろう。――本心でって…どういう意味だろう。  そんな、僕のナカを深く追及するような鋭い眼差しを向けてくるソンジュさんは、もう一度僕に確かめる。   「…どうなんです。ユンファさんの気持ちは。」   「……、もちろんです…」    本心…僕の本心――これは僕の本心だ。  じく、と滲んだのだ。僕の下腹部に滲む、淫蕩な響きがあるのだ。――ソンジュさんの美しすぎる青い目を見ていると、僕のナカで淫魔が踊り始める。…いやらしく笑っている。――淫乱にも、僕の目に涙が滲んでくる。 「…したいです…ソンジュさんとセックス、したいです……」    ソンジュさんに抱かれたら、僕はどうなってしまうんだろう。――いつもよりおかしくなってしまうかもしれない、そんな予感がする。…狂ったように悶えて、貪欲にも彼の肉体に手脚を絡み付かせて逃さないと、ソンジュさんの肉体にしがみついて、お願いします、もっと、もっとください、もっとくださいと懇願するかもしれない。    そんなみっともなくも蕩けた自分の姿が頭をよぎり、下腹部から下がじくじくと脈打っている。――まるで僕の下腹部のタトゥーが疼いているようだ。  僕はやっぱりオメガだ。――アルファのソンジュさんの前では、いやしくもオメガは、彼の肉体が欲しくなってしまうものらしい。    しかし…――ソンジュさんはそんな僕を睨むように見てくる。   「……それじゃ駄目なんだ。」   「……え…?」             

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