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――いや、
「………、…?」
「…はぁ、すみません、またアルファの発 作 が、――いえ、…大丈夫ですから…」
「…………」
そう優しい声で僕に話し掛けてきたソンジュさんは、優しく――空気を抱き締めているかのように優しく、僕を抱き締めたのだ。――そして、彼は僕の後ろ頭をする、すると撫でつつ、僕の耳元で…「大丈夫、大丈夫ですよ」と、優しく囁いてくる。
「俺、別に怒ってなんかいません。…突然あんなこと言って、…やっぱり驚かれましたよね、すみません……」
「……、ごめんなさい、お、お仕置き…してください……どうかお仕置きしてください…、僕にお仕置きしてください…」
僕はたしかにソンジュさんの言葉を耳にし、そして頭では理解しているのだ。――それなのに僕の口からは、震えているそんな言葉が出てきてしまった。
とにかく上の人におもねる。とにかく少しでもお仕置きの内容を軽くしてもらう。少しでもご機嫌を取り、少しでも自分の罪を認めていると態度に出して、少しでも、少しでもこうしないと、反抗したほうが酷くされるんだ、
「…いえ。いいえ、俺はユンファさんにそんなことしません。――何か、あたたかいものでも飲みましょうか。…ユンファさんは、何がお好きですか」
「っい、いえ、…いえ、――とんでもないです、そんな…」
「…じゃあ、俺のコーヒーブレイクにお付き合いください。そういうことならいいでしょう。ね…」
「……っ! いいえ、…」
僕は、僕をそっと抱き締めてくれているソンジュさんの胸板をグッと押した。――怖い、怖い、怖い。
ありえない、ありえないのに、――どうして、
「…ごめんなさい、もう大丈夫です…すみません、ごめんなさい、――もう大丈夫です、本当に大丈夫です…大丈夫ですから、僕はもう大丈夫、本当に大丈夫です、ありがとうございました、ありがとうございます、もう大丈夫ですから、…」
そうして僕はひたすら思いつく言葉を繰り返しながら、顔を伏せたままながらも無理やり口角を上げた。――もう本当に大丈夫だと示したつもりだった。
そんな僕の顔を見たソンジュさんは、グッと僕の顎を掴んで上げた。――彼は複雑そうにその淡い水色の目を曇らせ、そして少し眉を寄せていた。
「……、…ユンファさん」
「…ごめんなさい、本当に大丈夫です、ごめんなさい、問題ありません、僕は大丈夫です、心配かけてごめんなさい、ごめんなさい、お許しください、大丈夫です…」
「……ッ、…悪いけど、――貴 方 は 大 丈 夫 じ ゃ な い 。…」
不機嫌そうに顔をしかめたソンジュさんは、…ヒョイッと僕を、――軽々横抱きにした。
「……っ?」
「貴方は全然大丈夫じゃありません、ユンファさん…」
見上げれば、彼はその美しい眉を悲痛そうに翳らせていた。――ソンジュさんは怒ったような顔をして僕を見下ろしていたが、…ふっと前を向く。彼はそのまま歩き、僕を、どこかに連れて行こうとしている。
「……ごめんなさい…ごめんなさ、ご迷惑、おかけしてごめんなさい…」
「いいえ。ユンファさんは何も悪くありません。…悪いことをしたわけではないのだから、貴方は、何も謝らなくてよいのです。…お仕置きなんか、いたしません。」
「………、…」
僕を横抱きにしたまま、どこかへ歩いてゆくソンジュさん――僕が見上げている、その前を向いた顔はどこか、寂しげな笑みをほんのりとたたえていた。
「――や っ ぱ り パニックになってしまったね…、いや、当然だ。いきなりのことで驚いたよね、ごめんね、俺が悪いんです。…ユンファさんは、どうか何も気にしないで…、俺は何も、嫌な気持ちになどなっていないから…、本当に大丈夫だから、安心して……」
「………、…」
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