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「……ユンファさん」
僕の両頬を、そのあたたかい両手で包み込み――優しい水色の瞳で、僕の目を覗き込んでくるソンジュさんは、ふ…と僕へ、優しく微笑みかけてくる。…そして僕の目元、頬、と、彼の唇が、僕の涙を拭い、舐めとる。
「……、…、…」
「…ふふ…、涙も甘じょっぱいですね…? なんて愛おしい味だろうか…――これからユンファさんが泣いてしまったときには、俺がこうして、貴方の涙を拭って差し上げますね…」
擽ったいその人の唇、舌…拭う指――ソンジュさんは唇をふにりと僕の頬にくっつけ、こう響かせる。
「ですから…泣きたいときには安心して、思う存分泣いてください…、ユンファさんの涙は、まるで宝石のように美しいよ…――貴方の泣き顔は、本当にお綺麗で、たまらなくなるほど愛おしいのです…」
何ともロマンチックな、と…僕は思わず小さく笑った。
「…ふふ…擽ったい…」
「…はは…、笑っても、やっぱり美しいな」
「………、…」
する…と、ソンジュさんの顔が、僕の首に――は、と息を詰めた僕は、…頬がじゅわりと熱くなり、…きゅっと目を瞑る。
僕は、貴方ならいい…――僕がもう性奴隷じゃないとしても、たとえ…今交わした契約が、あろうが、なかろうが。
「……っ」
貴方なら、いいです…貴方ならいいんです…――ふにゅ…と僕の首筋に宛てがわれたソンジュさんの、柔らかい唇。…チク、と小さな痛み、…キスマーク。
キスマークをつけられた、と思うと、僕の体の奥が、内側からじゅわりと熱く、潤んでくる。
僕は、……貴方が……――馬鹿。…駄目、僕なんか。ありえない。
「……ふふ…、さあ、ユンファさん…」
「……は…はい…、…」
ドキドキしながら、僕は頷いた。
「……マフィン、食べましょ。」
「………、…」
マフィン。――マフィン…?
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