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――僕の両親が、もうソンジュさんにとっては、他人ではない…?
僕がハッとして見たソンジュさんは、…腕を立てて、ニヤリと妖しく微笑んでいた。
「――じゃあ…改めて契約成立ですね、ユンファさん…」
「……、は…はい…」
そう目を鋭く細めたソンジュさんは、…ふっと目線を横、僕の頭の下にある枕の隣、二つある枕のもう一つへと目線を転じた。
そしてその枕の下に手を差し込み、…何かをごそり、ごそりと二つ、取り出した。
「……暴れないでね、危ないから……」
「……、…へ…?」
そう微笑みながら僕に言ったソンジュさんは、片手に持った何かを、僕の首元に――僕の腹あたりに馬乗りになり、彼は僕の首輪の南京錠に指を添え。
ガチ、ガチリ。――と、何かの道具で、僕の首輪の南京錠を、破壊しようとしている。
「……、…、…――っやめ、…」
僕は途端に頭が混乱し、身をよじって抵抗する。
「やめてっ…やめてお願い、やめて、っお願い、やめて…っ!」
駄目、駄目、駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目、首輪外したら、僕、外すなって、駄目、…――僕は恐ろしさにガタガタ震えながら、必死に体をよじって、体の上にいるソンジュさんを制止したい。
「駄目、駄目、駄目駄目駄目、だめ、お願い外さないで、やめて、っやめて、ごめんなさい、やめてください、…」
「暴れないで、危ないよ…」
恐ろしいほどに優しい声で僕をそうたしなめるソンジュさんは、…ガチンッ――いよいよ南京錠を、破壊してしまった。
僕は、――『ただし、私たちの性奴隷だってことも忘れるなよユンファ。その首輪と乳首のピアスは絶対に外すな。…絶対に忘れるな、…お前は、ユンファ…私のものだ。』
「…っは…、…は、ク…ッ――やめてえ!! やめて、やめてよ、っやめて!! お願いなんでもするから、それだけはやめて、…やめてください、お願いします、やめてください、…」
ガチ、ガチ、と脚を振り上げようとしても足枷が、足枷に繋がっている固定されたチェーンが邪魔をして、――手を動かしてソンジュさんを突き飛ばそうにも、…やはり頭上からは動かせない。
「…なぜです…? ユンファさんは、もうあのケグリの性奴隷じゃないのですから…――この首輪も、いらないだろ…?」
そう平然としたソンジュさんは、僕の首輪のバックルをもうほどき始めている。僕は首をすくめ、顎を首輪に押し付けようと試みた。
「っは…やめて…やめてよ、お願い…、やめてぇ…っ! だめ、だめぇ、僕、それ外したら、…僕、っご主人様のもので、…僕、僕だめ、僕、…」
「そうだよね。これからユンファさんは、ご主人様でも ある俺だけのものだ。…ふふ、まさかケグリたちにこれでお仕置きなんかされないよ…、だって、これからはもう、貴 方 は 俺 だ け の も の なんだから…、大丈夫、安心して、首輪もあげるからね…――だから大人しくしていて、危ないから……」
「でも、でも、でも僕、…っごめんなさい、…」
でも、僕、僕首輪外したら、――またお仕置きされ、…どんな酷い目に合うかわからな、――泣きながらでも、でも、と繰り返す僕に、ソンジュさんは、ガアッと獣のように吠えた。
僕はそれに怯み、震えながら言葉を失う。
「……、…、…」
「…俺は、大人しくしてろって、言ってんだろ、…大人しくしてろ、ユンファ…」
冷ややかな低い声。冷ややかなその水色の目。――冷ややかな表情。…僕は怯えて凍り付いたように固まった。
そして――僕の抵抗も虚しく、
「――…、…っは、……」
「…………」
無情にもずるり…――僕のうなじをこすって、…赤い首輪 が、外れていった。…その瞬間、ゾクゾクゾク、と悪寒が僕の全身を震わせた。
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