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            「――ピアスも外そうね…、…」    ソンジュさんは僕の耳元に唇をつけ、そう柔らかい声で僕に囁き――片手でカチリ、…僕の乳首についたニップルピアスを、外した。  外れたピアスを手におさめて、両方のニップルピアスを外したソンジュさんだが――僕はもう、なぜか…やめて、駄目、ごめんなさい、という焦りと罪悪感の気持ちがない。   「いい子だ……」   「…………」    どうしてか…さんざん半狂乱になって泣き叫んで、疲れたからなのか…――はたまたこの黒い十字架の加護によるものなのか、ソンジュさんのことを…また優しい神様だと、思い始めているからか。  思えば、なぜソンジュさんが僕の手足を拘束したのかが、今になってやっとわかった。――おそらくソンジュさんは見抜いていたのだろう。…僕がああして、パニックになって暴れるということまで、彼は()()()()()()()()()()のだ。   「……見てください。どうかな、これ…」    ソンジュさんはギッと、また僕の頭の横あたりに片手を着いて腕を立て、ニッコリと笑いながら、もう片手の指先で摘んでいる赤――しずく型の、ピンクがかった赤い宝石が垂れ下がっている、その銀のニップルピアス。    そのニップルピアス…ピアスの部分は天使の羽根のような、ツタのような繊細な構造、バーベル型のようで、乳首につければその模様が乳輪を飾り、乳頭から赤いしずく型の宝石が垂れ下がっているように見えることだろう。――またよく見れば、その赤い宝石とピアスのつなぎ目の短いチェーン部分にひと粒、白い宝石が嵌っている。   「…ルビーとムーンストーン、プラチナで作りました。ユンファさんの誕生日石です…――いや、もちろんこれに関しては、奴隷の証などではなく…、むしろ、ピアスホールを開けてからそのままにしておくほうが、シコリなんかができて、よくないと聞いたのでね」   「…………」    ふふ、と目を細めて笑ったソンジュさんは、「それに」と穏やかな声で続ける。   「…このピアス、ユンファさんによく似合うかと。乳首や肌の色に合わせて調整してもらったものですし、ルビーにしても、品質と色合いにこだわって選定しました…――貴方の可愛らしいピンク色の乳首が、これでもっと魅力的になると確信しています…」   「………、…」    何というか…少し恥ずかしくなって頬がじゅわりとほんのり、あたたかくなる。…足のサイズ、信じている宗教の次は、僕の乳首の色…そりゃあ常日ごろから僕は、この乳首を多くの人に晒してきてはいるが、…そんなところの色まで把握され、あまつさその色に合ったニップルピアスを用意されているとは…――「じゃあ、これもつけてあげますね」そう僕に声をかけてきたソンジュさんに、僕は顔を斜に伏せて、目を瞑る。  場所が場所であるために、感じないようにと気合を入れているのだ。    ソンジュさんはややあって、片方の、僕の乳頭にちょんと触れてきた。   「…痛みがあったら言ってね…、…」    彼はそう僕を気遣い――僕の乳頭に、冷たく、にゅるりとゆっくり、ピアスが入り込んでくる。   「……ッ、ふ……」    何か、潤滑剤か、消毒液の類を塗ってくれたのだろう。  かなりなめらかに僕の乳頭を貫通したそのピアスに、痛みこそなかったが、…どうしてもヒヤリとした冷たさと、そのにゅる、とした感覚に、ピクンと僕の腰から上が小さく跳ねてしまった。――そもそも…ケグリ氏たちに、さんざん様々な方法でもてあそばれ、乳頭が米ふた粒ほどもぷっくりするまで開発された上で、さらにニップルピアスをつけられたのだ。…おそらく、思えばケグリ氏たちは、最初から僕にニップルピアスをつけさせる算段だったのだろう。    そうして痛覚が増えてしまった僕の乳首は、色素の増えないオメガ属であるために、色合いこそ薄桃色のままではあるが――それこそ、ソコだけで絶頂することがあるほど、敏感な場所になっている。    もう片方の乳頭にも、にゅる…と、ひんやりとしたピアスが、ゆっくり貫通してくる。   「……んふ、♡」    僕は眉をひそめ、またピクンと反応してしまったばかりか、今度はほんの小さいながらも声をもらしてしまった。…感じやすい場所だ、という認識を改めてしまったために、意識がソコに集まっていたのだろう。  それどころかぎゅう、と乳輪から集まっている感覚がする。ぷっくりと期待しているように、乳頭を勃たせてしまっていることだろう。   「…ふふ…可愛い反応だ…、正直、抱きたくなっちゃうよ……」   「……、はぁ……、…」      いっそ…――抱かれたい、のに。           

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