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               僕の下腹部がグネグネうねり、ビク、ビクと跳ねる。  ナカが、どろどろに熱く蕩けてしまった感覚――溜めに溜めたものを一気に放出したような、ほう…とする開放感、じんわりとした幸福感が下腹部に広がる。はぁ、はぁと切れた息を整える僕は、ぽーっとソンジュさんを見下ろす。…まつ毛が涙でびちょびちょに濡れて、ゆっくりとまばたきをするたび、ぴとぴと下まぶたにくっつく。   「――…ぁ…、は…、は……」    余韻にひたり、ぼーっとしている僕は――クゥクゥ喉を鳴らしながら、僕の乳首をペロペロするソンジュさんが、とても可愛らしく見えた。――そっとその人の後ろ頭を撫でると、…つ、と弱気な目をして水色の瞳が僕を見上げる。   「……申し訳ない…、…少し血が…」   「……あぁ、はは…、大丈夫です…、むしろ、痛みで僕、イっちゃいました……」   「…それは……、へぇそうですか。なんと…いやぁ、随分魅惑的なお体をお持ちなんですね、ユンファさん…、素晴らしい…」   「…ははは…」    言ってから気が付いた。  普通に(乳首から血が出るほどの強い)痛みで絶頂しました、なんて事実は、あわやドン引きされかねない発言だったことだろう。――しかし僕がそのことに気が付いたのは、ソンジュさんがやや驚いたあとに、ワクワクと目を輝かせて、にっこり屈託なく喜んだあとである。  不安になる間もなく、安心してからあっと、そういえばそんなこと言ったら引かれかねなかったよな、と気が付いた、――そう気が付いたからこそ、ソンジュさんが喜んでくれたことが、より嬉しかった。    が…そういえば僕、ソンジュさんにイっていいとの許可を、もらえたんだったか。――正直ギリギリのときにお許しをねだったので、記憶があやふやだ。   「……ぁ…勝手に、イっちゃって……」   「? なんのことやら…イかせたのは俺だよ。勝手に…?」   「………、…」    きょとんとし、ふわりと疑問を宿しながらも微笑んだソンジュさんは、すっと立ち上がった。――格好良い、な。惚れるしかないほど、もはや中身までイケメンである。  ていうか、僕…今無意識だった。――別に絶頂の許可をもらう必要なんかないはずなのに、疑いもせず悪いなと、ちゃんと許可をもらえたんだったか、と…そう自然に思考していた。   「………、…」    思考まで操られる、か。――これが、マインドコントロール…というやつの、影響なのかもしれない。   「…そんなことより、気持ち良かったですか…? たいへん艶やかでしたね、ユンファさん…、…」   「…………」    顔を上げ、ぼーっとソンジュさんの穏やかな顔を見上げる僕は、…正直落胆していた。――彼、これで終わった、みたいな、清々しい顔をしている。いっそ爽やかなまでの、達成感に満ち溢れた笑顔だ。  僕を抱くつもりなんかない、と言ったソンジュさんは、やっぱり…――その通り、本当は、僕のことなんて抱けないんじゃないか。    ――どうしてこんなに、不安になるんだろう。   「………、…」    でも…実はまだ、僕の体は()()()()のだ。  疼いて熱を持った体の芯も、また彼にだってあきらかになっているはずの、頭をもたげている僕の男の情欲の証も、…届かなかった奥の疼きも、僕は、今にもソンジュさんに縋ってねだりそうなくらいに昂っている。    さっき僕にあんなこと言わせたんだから――責任持って、僕をめちゃくちゃにしてほしい。    僕の淫乱そのものに成り果てた体はまだわかっていないが、僕の頭はもう決して、それらが果たされ、満たされることがないとわかっていた。――僕は縋るように、彼の目をまっすぐ見つめてみる。   「……ソンジュさん…、…」   「……ん…?」    ソンジュさんは、僕の潤んだ目の、()()()()()()に気が付いているはずだ。――彼はなんだろう、と顔を傾けるが、…ソンジュさんなら、()()()()()はずなのだ。  しかし正直、僕には彼の興奮を見る勇気がない。これで大きくなっていなかったらと思うと、怖いのだ…――僕はうつむき、中途半端に腕に絡んだローブの袖から、腕を引き抜きつつ。   「…凄く、気持ち良かったです…、ありがとうございました……」    言えるわけがない――本当は、もっと欲しいです。  ソンジュさんが欲しいです。――抱いてほしいです。    抱いてほしい。――めちゃくちゃにしてほしい。  毎日毎日めちゃくちゃにされて、毎日毎日突かれてなぶられ続けた僕の子宮口が、甘やかされた子供のように欲しい欲しいとくずって泣いている。  やっぱり僕は、下手に優しくされないほうがいいのだろう。――そんな資格がある綺麗な体じゃない。下品で汚い体だ。――酷く、酷く、荒く、荒く、何度も何度も犯されないと、満足できない淫蕩な体になってしまった。    いや…――もともとそうであるオメガの僕の体が、ただ、ケグリ氏たちによって目覚めさせられただけのことなのかもしれない。   「……ふふ…、ユンファさん? ――俺にどうしてほしいのか、はっきりおっしゃって」   「………、…」    僕は逡巡し、瞳がくらっと揺らいだ。  …でも、どうせ言うなら、言えというなら――僕は確実に、抱かれたい。勃っていないなら、テクニックを駆使して勃たせるまでだ。    顔を伏せたままの僕はそっと手を伸ばし、手探りでソンジュさんの中心に、…触れてみた。――驚いて、ひく、と少し触れただけで僕は、手を引いてしまったが。   「……、…、…」    おっと、…え……?  す…っすっげ、デカ…待て、待って、ま、()()()()。    ――デッカ…っていうか、何コレ。本当にコレち…え? デ…なにこれ? なんだっけ? いや、どうも僕の知ってる()()のサイズじゃなかったような…?  ダラダラ冷や汗が出てくるんだが。――あんな清々しい顔して冷静そのもの、俺は全然ムラムラしていませんまさか紳士の俺が発情なんかしませんけど? え? まあユンファさんがしたいならしてあげても構いませんよ? みたいな冷静沈着爽やか紳士ムーブかましておいて――しっかりガッツリバキバキに勃起してるじゃないか。めちゃくちゃ硬くデカく熱くなってるじゃないかよ、完全に勃起してあんな顔してたのか、さすがに動揺する。    フル勃起していてあんな冷静な顔ができる男がこの世にいたのか、普通に勃起してたら突っ込むことしか考えられないのが男ってもんだとばかり思っていた。やっぱり僕って、恋愛のことは何も知らない奴だ。    なるほど、軽率だったらしい。  もう簡単には言えない――簡単に「抱いてください」と言う気が失せた。…覚悟がいることだ。  さーっと血の気が引く。――いや…思えばそりゃ、カナイさんに抱かれたとき、僕、…()()()()()()()…と。     「……、…、…、…」      つまり――彼のがで、デカくて…血が、出たんだった。         

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