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「……っ、…ごめんなさい、申し訳ないけど、…それに僕、…ソンジュさんの周りの大人に、僕は、…腹が立ちます、……」
子供が、本当は愛されたいと願っていることを、大人のくせに見抜けず――笑わないから、泣かないから、素直じゃないから、生意気だから――そんな表面的な理由で、「可愛げのない子供」という言葉で片付け、子供を傷付けた大人は、…大人なんかじゃない。
大人として、子供に接する権利すらない、そんな大人は。
子供らしさがないからって、その子は決して大人なんかじゃないのだ。――子供は、子供なんだから。
そもそも、どうしてその子が、そうなってしまったのか…――本当は無邪気に笑いたい、素直に泣きたい、我儘を言いたい、甘やかしてほしい、でも…――「大丈夫、問題ないから」…子供が大人の手を拒むようなことを言う、子供が大人を拒むような態度を取る、子供がいつも黙ってむすっとしている。
あぁ、可愛くない子供…――そう思う前に、なぜその子がそうなってしまったのか…その理由も考えず、全てをその子供のせいにして、――なぜ自分や、その子を取り囲む環境や、周りの大人が悪いんじゃないかと、その子が困っているからそうなっているんじゃないか、何か辛いことがあるからこそなんじゃないか、…なぜ、なぜソンジュさんの周りの大人は、そう考えられなかったのか。
ただ「可愛げのない子供」というので片付けた大人たちは、一体何を見てきた? 子供の何を、見てきたのだ。
自分の人生で蓄えてきた経験や知識を通して、何を見てきた、何を培ってきた、何を、考えてきたんだ。
無責任だろ、どいつもこいつも、
助けを求めている――。
そういう子供はきっと、むすくれることで、本当は大人に助けを求めているのだ。――必死に我慢している顔なのだ、そのむすくれた顔は。
「…貴方のむすくれた顔に、目を塞いできた大人こそ――無責任で、可愛げのない、馬鹿な人たちだ、…その人らが間違ってた、子供を持つ資格も、子供を育てる資格も何もない、愚かでよっぽど大人げのない人たちだったんだ、…子供から遠ざけるべき大人だ、…だから、…だから貴方は何も、悪くない……」
「…………」
「…ソンジュさん…貴方は、…貴方は何も、…本当に何も悪くありません、…――悪い子じゃないよ、この世界の誰よりも、…誰よりも可愛くて、ほんとうにいい子でした……」
たくさん、たくさん――したくもない我慢をして、馬鹿な大人たちなんかに、それでも褒められたいがために我慢して――頑張って、一生懸命だった。
本当はきっと、他の子たちのように褒められたかったのだろう。――ただ両親に、「えらいね」と笑って、頭を撫でてほしかったのだろう。
僕は抱き締めたソンジュさんからするりと離れ、正直、涙で顔は歪んでしまうが――彼の小さな頬を両手で包み込み――必死に笑った。
ぼうっとした涙目…ソンジュさんの、その幼気な淡い水色の瞳を見つめて、僕は――。
「……えらいね、ソンジュ…――。」
誰よりもえらい貴方を、褒めてあげたかった。
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