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「…使えるものは、我 が 身 の も ふ も ふ をも使え。といったところでしょうか。」
したりと笑いながらソンジュさんは、その場に伏せの体勢を取る。…そして僕のことを、そのつぶらな水色の瞳で見上げつつ、ブンブンとふさふさの金色の尻尾を振っている。――つまり、“狼化”した自分の体を使って、僕のことを癒やしてくださるというのだろう。――さながらアニマルセラピーのように。
「どうぞユンファさん。…俺の好きなところを、お好きなように撫でてください。」
「……、ふふ、ご自分で……」
おかしいやら可愛いやらで、僕は思わず笑ってしまった。…わんこだ。――まるでわんこと話している気分だ。
「…ええ、どうぞ? まずお気持ちを落ち着けなくては、ちゃんと話もできないでしょうから。」
「……いいんですか…、じゃあ、すみません…、……」
言いながら僕は、もうすでに手を伸ばしている。
ソンジュさんの(わんこ的な)可愛さにメロメロになっている僕は、控えめにソンジュさんの頭を、なで、なで。…そのピンっと立った三角の耳の間、狭い頭を撫でさせてもらう。
「…ふふ……」
自然と目が細まり、笑みが浮かぶ。
額から頭は毛が太く短く、ゴワゴワしているがもちろんあたたかくて、…わんこ、過ぎる。
「…どうです…癒やされます?」
「…ええ、とても…、……」
だが、こうしていると…――思 い 出 し て しまう。
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