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                        「なぜそんな目をするの…? ははっ…――綺麗にしてあげるね……」   「…グ…ッ、…〜〜ッ」    またシャワーヘッドを口に向けられ、…どうやらそれで鼻血を洗い流されているらしい。   「…苦しいね…、ごめんね、ユンファさん……」   「…ガふ、……ッ」    僕はもう諦めてこのまま溺死でもしてやろうか、と固く目を瞑ったが――ガタンッ――ソンジュさんはそこでシャワーヘッドを手放し、…僕のことを強く抱き寄せ、抱き締めてきた。   「ごめんね、ごめんねユンファさん、ごめんね…」   「……はぁ、……」    キュウキュウと喉を鳴らして、怖がっている。  怯えているような震えた声で「ごめん、ごめん」と繰り返すソンジュさん。…涙目で見たソンジュさんは――僕と目が合うなり、ほろりと透き通った涙を、その無垢な水色からこぼした。   「…俺どうしたらいいんだろう、何してるんだよ俺、本当にごめんなさい、――貴方を苦しめたいわけじゃないのに、…こんなことしたいわけじゃないんだ、でも抑えられないんだ、…殺してしまうよ、このままじゃ…っユンファさん、お、俺から、…」   「……はぁ、…――ソンジュ、さん…」    泣いている――「俺から逃げて、…」――僕は、  ……僕は――笑った。         「…逃げないよ…もう逃げない。…ソンジュ…――もっと僕をいじめて…? 僕のために、もっと僕に罰を与えてほしい…、…僕にもっともっとお仕置きをしてくれないか、ソンジュ…?」          僕は泣きながら、鼻血を垂らしながら、笑っていた。  我ながらイカれてる。――僕もまた、イカれてる。    するとソンジュさんはまたギロリと恐ろしい目をして、僕の前髪を掴んで横へ、ドタッと僕を引き倒し。  ドタ、と横に手を着き、僕はうなだれて――甘受する。   「……はぁ…ッ、……ッ」    僕の後ろ頭に、背中に、肩に、腰に、脚に、冷たいシャワーの水がジャージャーとかかり――バスローブが張り付いてきて気持ち悪い…それに体が冷えてきて、寒い。  嬉しい。罰が嬉しい。――お仕置きしていただけて、胸がスッとする。本当に嬉しい、有り難い。   「なあ、なぜあんな醜くて卑しい男に体を許したの…? 俺だけのものなのに、貴方は俺だけのものなのに、俺だけの性奴隷、俺だけのつがい、俺だけのユンファ…俺だけのユンファが、なぜ、なぜ、なぜ、…」   「は、は、…ごめんなさい、…ふふ、ごめんなさいソンジュ、ごめんなさい……」    なぜか無性に笑える。――ガタガタと笑える。  ボタボタと自分の黒い前髪から滴り落ちる水が、ぼた、ぼた。それと共に、時折垂れてゆく鼻血の丸がすぐに薄まり、排水口へと流れてゆく。――胸がスッとする。  嬉しい。…嬉しい。…嬉しい。――だってこれは、ソンジュさんのこれは全部、全部僕への愛だから。     「ありがとうございます、僕、…っ嬉しい……」      泣くほどに嬉しい。  神様に、こんなに愛していただけて、本当に嬉しい。     「…ァ…――っん、♡♡♡」        嬉しくて、嬉しすぎて…イっちゃった――なんて幸せなんだろう。         

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