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「アイツとシた…?」
僕の前髪を掴んでまた引き上げたソンジュさんの、その凍り付いたアイスブルーの瞳を見上げる僕は。
「…っい、いいえ、ふふ、…そこまでは……」
ヘラヘラと笑ってしまう。――嬉しくて。
だが事実、それで穏便に済むなら――それが勝手な僕の罰になるのなら――犯されても、構わない。
そう思っていたのは事実だ。――つまり、僕があの男とセックスをしようとしていたのは事実なのだ。
もちろんその前に、レディさんとサトコさんが来てくださって、未遂で終わったのだが。
「…でもしゃぶったってことは、アイツとシようとしてたんだよな…? その思考がもう、俺は許せない…」
「…ぐふ…っガ、!」
また顔にシャワーの冷水をかけられて、僕は溺れる。
首にジャージャーと伝ってゆく冷たい水が、僕の体を愛撫する。――乳首が勃ち、ゾクゾクと冷えた体が、快感とも悪寒ともつかない何かで震え、粟立つ。
「…悪い人…悪い人だ、本当にユンファは…悪い人だ…」
「……っは、ガッ…ゲホッ…ごほゴホ、…ご、ごめんなさい、ソンジュ、……」
僕は彼に前髪を掴まれながら、その人の冷ややかな水色の瞳を見上げながら、肯定の意味をもってして、謝罪の言葉を口にした。――ヘラヘラ笑いながら。
すると強い力で捨てられ、僕はまたドタッと床に手を着く。
「…ユンファはもう俺だけのものなんだよ。俺だけのものなんだ。ユンファ…もういい加減、わかってね…?」
「…は、…ご、ごめんなさ…はい、ごめんなさい、……」
怯え、震え、荒い吐息に混じえ――それでいて妙な高揚感に、ガタガタと全身の筋肉を戦慄かせ、笑い。
ぴちょん、ぴちょん…僕の前髪から、雫が落ちてゆく。
体が冷えきり、寒さからはぁ、はぁと息が乱れ、…今もうなじに当てられている冷水のシャワーに、冷えた唇は震えているが、笑みに歪んでいる。――その、ジャージャーと激しく水の流れる音にまぎれた、僕の声は。
「…貴方、貴方…だけのものです、僕はもう、ソンジュさんだけのものです、――全部…全部、僕はもう、貴方だけのものです、……」
恐怖心からおもね、ガタガタと寒がって震えている。
それでいてこう自分で言葉にすると、内側から胸が、切ない子宮が、全身が内側から、じわじわと湧いてくる熱にみるみる、満たされてゆく。――怖い。でも、本当に幸せだと…――流れてゆく。…シャワーの水と共に、白濁したものが。
「……次逃げたら本当に殺すよ。わかった…?」
「……、…、…」
僕はとにかく怖くて怖くて、何度も何度も頷いた。
本当に容易く殺されてしまうのだろう――いっそ、殺されてしまいたい。前歯が空気に触れる。
キュッと、ソンジュさんはシャワーを止めた――と。
…思ったが、そうではなく。
「……は…、…――。」
あたたかいお湯に変わったそれは、ぬるま湯。
僕の冷えた体を慮るよう、熱い温度ではなく、やさしく肌を撫でるような、優しい温度のお湯――冷えた体に染み渡ってゆく心地よい温度に、喜んだ僕の全身が粟立つ。
まるでそれは、慈愛の恵み。
…許しを与えられたかのような、安心感――。
「……っひ、…ぐぅ…っ、――…ッ♡♡♡」
僕はうなだれたままに、嗚咽した。
泣きながらまた絶頂した。
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