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                  そうして優しく、甘く、若い、初めて同士の「夢を見ているような」セックスをした二人は、結ばれた。――そしてカナエとユメミはベッドの中、手を繋いだままに朝を迎える。    二人は生まれたままの姿で、硬く狭いシングルベッドの上、白くて薄い掛け布団に包まっている。  向き合って、一つの枕を分け合っている二人――カナエはユメミの目を、真剣に見つめた。   「このまま二人でどこまでも逃げて、俺たち結婚しよう」    少し大人びた顔をして、ユメミへ改めてそうプロポーズしたカナエ。  それにユメミは、目に涙を浮かべながらこくんと幸せそうに微笑み、枕の下にしまったカナエの手を握り締める。   「…僕、夢を見ているのかな」    そう笑いながら泣きそうな顔をするユメミに、カナエは彼のことをベッドで抱き寄せた。   「いいや、これは夢なんかじゃない。」    ユメミは何も言わず、カナエを抱き締め返した。  黒い遮光カーテンの隙間から透明な朝の光が、まっすぐに淡く、一筋ばかり差し込んでいる。…淡くも確かな明るいその光にキラキラと照らされて輝くのは宙に舞う埃たち、そして…掛け布団からはみ出した、組み合わさる四つの素足である――。     「……はぁ……」    と…『夢見の恋人』は、こういった話だ(これでも僕がざっくり内容を思い出しただけなので、本当はもっと引き込まれるような描写、かつ詳細に描かれている)。    やっぱりなんとも素敵な純愛物語だ。    ちなみに『夢見の恋人― 2 ―』の内容をざっくりといえば――恐らくヒントとなり得るのはこの『夢見の恋人』のほうだろうと思うので、『― 2 ―』のほうはもっとざっくり――結局子供の二人は大人の魔の手からは逃げ切れず、ユメミはあの中年男と、カナエは許嫁と結婚をしている。  しかしカナエは勃起不全に陥り許嫁を抱くことができす、ユメミもなぜかセックスを繰り返しても妊娠はできないで、義両親からも夫からも『出来損ないの役立たず』と罵られていた(それもユメミはファーストキスや処女をカナエに捧げているから、尚の事「この淫乱」などといって、酷い扱いを受けていたのだ)。  そうしたカナエとユメミは、お互いに望まない結婚をさせられている中で再会し、逃げた先で二人きり慎ましく幸せな生活を始めるもまた追っ手に捕まり、二人は結局元の結婚相手のところへ戻るのだが…――なんと、ユメミはそのときにカナエの子供を妊娠していた。  そしてユメミはそのことが夫にバレるも、夫はユメミを手放さなかった。…「その子は私の子として育ててやる。その代わりお前を、もう二度と外には出さない」と監禁されている中でもユメミは、「カナエくんに届きますように」とその子が生まれたのち、子育てブログで秘めやかにカナエへと子供の成長を教え、そのブログを見たカナエが「夢のように可愛い赤ちゃんですね」とコメント、それにユメミが「夢なんかじゃありません。この子は、僕の世界で一番愛おしい人との間にできた、世界で一番大切な子供です。会わせてあげたいけれど、僕はもうこの籠からは出られないから」と返し――カナエがパソコンの前で自殺さえ考えながらも泣く……というところで。    終わっている!    そう。…僕が知っている限りで『夢見の恋人』は、この二作目のあと続編は書かれていない。――最近は本屋に行けることもないので、あるいは知らぬ間に出ていたり…なんてことは、…ないだろうが。  とにかくこの終わり方で『もうこれ以上この二人の行く末を世に出すつもりはありませんので、あとは読者の皆さんがお好きなようにしてください』なんて残酷な丸投げを、読者たちにしてのけたpine先生である…――。           

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