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とはいえ、そんなのは夢のまた夢、という状況に置かれていた僕だ。――ファーストキスの相手はあのケグリ氏、僕の初体験にしたって、ケグリ氏にあっさり奪われてしまった。
それどころか今や僕は、誰にでも体を許す性奴隷…誰の精液でも、まるで排泄されるようナカに受け入れる、肉便器だったのだ。――あの『DONKEY』では“恋人プレイ”なんて、好きでもない、下手すれば初めて会ったような人にも恋人面をしていたが。
僕の唇や体が薄汚く安いばかりか、僕の「愛してるよ、大好きだよ」なんて言葉さえもそのような、叩き売りの文句に相応しているくらいだろう。
そうした性奴隷の僕でも、密かに夢見ていた。
好きな人とのキスも、その人とのセックスも…――だが、近頃の僕は自分で、その夢にナイフをグサグサと刺して殺していたのだ。――どうせ叶うはずもない夢だ。あり得ない。
こんな性奴隷に恋をして、愛してくださる人なんているはずがない。馬鹿じゃねえの、お前は一生性奴隷、一生そんな幸せな経験はできない。――おこがましいんだよ、肉便器のくせに。
今更誰かだけの体になれると思うか?
今更、恋人だけを愛してる、なんてどの口が言えるんだ?
何百人もを受け入れてぶっかけられて汚されて、精液まみれの臭いその体で?
何百人とキスをしてしゃぶってきた、心にもない愛を囁きまくってきた、その口でか?
薄汚い性奴隷のくせに、高望みだ。
貴方だけ…――誰がそんなことを信じるというんだ?
お前なんか、誰にも愛されない。恋なんかされるわけがない。お前は不細工なんだから、綺麗なんていわれることは一生あり得ない。
お前なんか、ただの性欲処理道具だろ。
ただの穴なんだよ。
お前の価値なんて、その穴だけだろ――。
「…………」
こうして自らズタズタに、その浮ついた夢を殺さなければならなかった。…その夢が目を覚まさないように、首を絞めて殺さなければならなかったのだ。
じゃなきゃ僕は、それこそおかしくなりそうだった。
――もしこうして殺さなければ、僕は日々の陵辱を、真っ正面から受け止めなければならなかった。
ただ、どうしても…――殺しても殺しても、グサグサナイフで刺し、ボコボコに殴って醜く顔を腫らせ、首を絞めて、海に沈めて、毒を飲ませて…――そうして殺しても、殺しても殺しても、…どうしても…時折、
誰か、だけの…――。
誰かに、…愛され…――。
助け……――。
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