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                要らないことまで思い出してしまった。  脱線したにも程がある。     「…………」    それにしても…――気のせいだろうか。  思えばどうも、やはり類似点があるような気はする。    いやもちろんのことながら、僕とユメミはそもそも生い立ちは違う。――まあ、似通った点はあるのだが。    ユメミは実両親を事故で失い、天涯孤独の身であったところを叔父夫婦に引き取られて養子になるが、オメガであるからという理由で叔父夫婦には虐げられている。    一方の僕の場合は、僕がオメガとして生を受けたために、実の両親――五条ヲク家の両親――が僕を手放し、そして月下夫妻の養子となったものの、月下の両親は僕のことを実子同然か、下手すればそれ以上に愛して育ててくれた。…僕に虐待の経験はない。    またユメミは、オメガであるからと避けられており友達もおらず、学校でもいじめられていたが――一方の僕は、それこそ性奴隷に堕ちるまでは普通に友達がいた。…むしろ友人は多いほうだったかもしれない上、いじめられた経験もない。    ただ、ユメミの生い立ちやいじめなどの境遇は、はっきりいって残念ながらも、オメガにはありがちなことだ。  それこそ僕はオメガらしくないところが多く、性格にしても昔は堂々としていたからか、そういったありがちな環境に身を置くようなことにはならなかった。    しかし普遍的にオメガは、学校でもいじめの標的になりやすく――そもそも社会で差別されがちなのだ、大人がそうでは、子供たちの間でもそれが正当化されやすいのかもしれない――、また、どうせ“まともな職業”に就けるはずもないんだからと、アダルト業界に就職されるよりは結婚させて子供を産ませたほうがマシ…というように。    作中でユメミもまた高校卒業時点で勝手に、義両親が決めた男と結婚させられているが――世間でも、一応は高卒まで取らせたあと(低学歴すぎては結婚も難しいらしい)、両親がオメガの子を早々に誰かしらと見合いをさせて、結婚させてしまう――悪くいえば、目の上のたんこぶをさっさと片付けてしまう――ようなことも、まあありがちなのだそうである。  ちなみに、ユメミもまた自分よりいくらも年上の男に嫁がせられているが、それに関してもよくあることなんだという。――それこそ若い子はお見合い結婚なんて手段を取る人のほうが少ないから、だろうか。    と…すると――仮にソンジュさんがpine先生で、ユメミのモデルが僕であったとするなら――もしかpine先生は、ひと度しか会ったことのない僕に、オメガとしてはありがちな境遇を重ね合わせた結果、ユメミというキャラクター及び、あの『夢見の恋人』を作り出したのかもしれない。         

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