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                  「…しかし、ユンファさん…」   「…はい…? なんでしょう、先生」    僕はソンジュさんに腰を抱き寄せられ、はらりと容易く彼の肩に寄り添った。――正直な話、僕は彼がpine先生だとわかってからというもの、確実にソンジュさんへの見方が変わった。  薄情な忖度だが、すなわち僕は今もはや、ソンジュさんへ羨望と敬愛の眼差しを向けざるをえないのだ。   「…ふっ…そんなに目をキラキラさせてくださるならば、もっと早く自分がpineだと明かすべきでしたね」    そう嬉しそうでありながらも、少しいたずらな笑みを浮かべるソンジュさんは、僕の耳の下からすーっと、顎の先までを撫でてくる。…艶っぽいその所作に、またドキドキしてしまうが――自然と少し上向きになった僕の顔を、彼は優しげに、とろりとした甘い水色の目で眺めつつ。   「しかし、何もそこまで…、握手程度で喜びすぎですよ」   「…え? いえ、いえそんなご謙遜を、…僕はずっと尊敬しているpine先生に、一度でいいから握手してもらいたいと、念願叶ったりです、本当に夢でしたから」   「…はは、可愛いなぁもう、――いえ、ですが…握手も何も、先ほどからハグもキスも…()()()()()()、…ねえ…?」   「……、…」    あ、そうだった…と、僕は改めて認識したこの奇跡的な今に、逆に思考停止してしまった。――そしてソンジュさんは、僕の片頬をあたたかい手で包み込み…ニヤリと白く鋭利な犬歯の先端を、その唇の端に覗かせる。   「…ね…? 正直そう思うと、今更といえば今更でしょう。握手程度でそこまで…ふっ…全く、可愛い人だな…」   「……ぁ、ぁー…、…」    そうだ、そうだそうだ、――そうだった。  思えば僕は、pine先生であるソンジュさんと今日、何度もキスをしたし抱き締められた。それどころか、…その。  あぁ顔が熱い、喜びのような羞恥心のような、何ともいえないこのざわざわとした感情に、体がふるふると小刻みに震える。――とても寝られないかもしれない、変にテンションが上がり、目が冴えてしっかり開いている。   「…ぁー信じられない…、先生、僕を叩いてください…」   「……は?」   「いやっ(つね)ってください、…夢じゃないかどうか、どこでも結構ですから、…」   「…………」    ソンジュさんは、半泣きでそう言う僕のことを、憮然とした顔で見ている。…ただ、彼は僕の頬にある手で、ふにりと浅く優しく、僕の頬を指先でつまんでくれた。  しかし、それがあんまりに優しい力であるばかりに僕は、それじゃあ意味がないと、   「っもっと強く、痛くしてください、…」   「……はは…その言葉だけを聞くと、ちょっと…エロいですね」    そう苦く笑うソンジュさんは、僕の頬からするりと手を下げ…――僕の胸の先を、キリ、と指先ですり潰すようにつまんでくる。  いた、…硬いピアスに挟まれた先端に痛みを感じたが、感じて「…ん、♡」と声が出てしまい、またそのせいで僕はビクつき、眉をひそめた。  するとソンジュさんは、その切れ長の目をぬらりと妖しく光らせて、僕を見ている。   「…はは…、(そそ)られるなぁ…」   「…は…、ごめんなさい…」    我ながら甘ったるい声で謝罪してしまった。  ニヤニヤしているソンジュさんは僕の乳首の痛みをなだめるよう、さわさわとそこを優しく撫でつつ――それがまた、いやらしい気分になりそうだ――。   「…痛かったですか」   「…痛、かったです…でも、…ぁ…♡」    コスコスとパジャマの上から先端を擦られて、僕はまたびくん、としてしまった。   「ふっ…可愛いなぁもう、本当に…――だけど、そうなら確かに夢ではないでしょうね。ね、ユンファさん…」    僕はソンジュさんの優しい眼差しを受けている今が、まったく現実味がないと感じている――僕は夢を見ているんじゃないかとも思える――が、しかし、たしかに僕の乳首は抓られて痛かったし、思わず気持ち良くもなってしまっている。…これはたしかに夢ではなく、現実らしい。   「はい…そう、みたいですが…、どうしましょう、僕は本当、ど、どうしたらいいのか……」   「…ふふ…ならこのまま、身を任せてみては…? 脚を開いて……」   「あ…脚…? はい……」    僕はあまりにも迷わず、脚を開いてしまった。         

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