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64※モブユン

                 ユンファさんを犯していた男は、面白そうに彼の膣から勃起を抜いた。より彼の精神をサディスティックに責めようというのだろう。  しかし何が「何君だけ勝手に気持ち良くなっているの」だ、男の反り返ったモノは、彼の膣から抜き取られるなりビンッとその肥えた丸い腹に張りついた。そうして男は誰が見ても明らかなほど極限まで勃起している上、その先端は射精を間近に控えて赤黒くなっているではないか。  男はその勃起を片手で前へ倒し、その赤黒い先端をにゅるにゅると彼の膣口に擦りつける。   「“どなたでも結構です、どんなおちんぽでも大歓迎です、何でもするから、おちんぽ大好きな僕の淫乱オメガまんこに、どなたかどうかおちんぽを恵んでください”…――忘れたの? ユンファくんがそうやって泣きながら頼み込むから、あんなに可愛い子のまんこから渋々抜いて、わざわざブスの君におちんちん挿れてあげたんだよ?」    そう――ユンファさんはさんざん多人数の男たちに(なぶ)られたあと、一時的に放置されていた。  ()()()()()、だ――カウンターテーブルに顎を置き、お尻を突き出し、拘束棒によってよんどころなく性器を晒しながら、男たちの精液のたまった両穴にバイブを突っ込まれ、そのバイブを「落とすなよ」と自らの手で押さえさせられて……その状態で彼はしばらく放置され、誰にも相手されない時間があったのだ。そしてその間、客の男たちはみな彼の背後で、女の性奴隷を犯して楽しんでいた。    なお、それはケグリが提案したことだった。  それこそ女の性奴隷はむしろ「思いっきり喘げ」と命じられている中、同じ性奴隷であってもユンファさんの声は「醜い変な声」なので、声を出すことを禁じる――それを罰ありきのゲームにさえされる――それに関してもそうだが、ケグリはそうして彼をより惨めな状態に堕とすことで、ユンファさんが性奴隷も他の性奴隷より更に下等な性奴隷であると、そのような無価値な自己認識をユンファさんにさせたいのだ。  ケグリはとことんまでユンファさんの自己価値を(おとし)めたいのである。それは、そもそも高嶺の花である彼をそうして極限まで見下すことにエクスタシーを覚えているというのもあるだろうが、何より、逆にユンファさんが高嶺の花であるからこそ、彼をそこまで堕とさねば、まずケグリなんかでは彼を手中に収めることができないからだ。    あれでケグリはよくわかっている。  引く手あまたの驚かれるほど美しい若い男が、まさか、醜く薄汚い中年男のケグリなんかをわざわざ選ぶ理由などない――。  そう、マインド・コントロール作戦のその一環として、このときのユンファさんは、しばらくの間()()()()で放置されていたのである。  だが、それも頃合いケグリが彼に犯してもらえるように大声で客を誘え、頼み込めと命じたので、客の男が言ったようなセリフを、彼は羞恥心から震えた大声で叫んだ。――それでこの小太りの中年男が、あくまでもしょうがないなぁという渋々のふりで、ユンファさんを犯しはじめたのである。   「……は…ご…ごめ、ごめんなさい…、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」    男に濡れた膣口をモノの先端でこすられながら、ユンファさんは腰を丸めて頭を下げ、ひたすら平謝りをした。が、男は「ごめんなさいじゃなくてさぁ」と嫌な声で嗤うと、「おちんちん欲しいの? 欲しくないの?」と彼の膣に極あさくモノの先端を挿れては出す。ほとんど先端で彼のそこを(つつ)いているような感じか。   「……ほ…欲しい、です…」    これはユンファさんの嘘である。  むしろユンファさんの本心は『もう休みたい』というものであったが、彼はこう言うしかなかった。  またどこかから男の野次が飛ぶ。「僕のだーいすきなナマちんぽでメス奴隷のまんこ犯してくださ〜〜いって、お尻振りながら」   「…ぼ、僕の…だ、だい……」    ユンファさんは高い鼻先からぼたぼた脂汗を落としながら、その唇を小さく動かした。しかし「ユンファ!」と、ケグリが名を呼ぶだけで彼を責める。  それにまたビクンッと怯えたユンファさんはハッと顔を上げると、無理やり笑った顔を背後の男へ振り向かせ、ふりふりと左右にお尻を振りながら、   「…僕、! …っ僕のだっ大好きな、は…はは、…は、…ぼ、僕のだ、…だぁいすきなナマぉ…おちんぽ、で…奴隷のメスまんこ、犯してく…くだ、くださ〜い…っ!」    ユンファさんの引き攣ったその笑顔は、明らかに「笑え」と脅迫された人の強いられた笑み、そうとしか言えない痛ましいものであった。おそらくこういった滑稽な淫語をユンファさんに言わせようというとき、ケグリは「笑え」と彼を躾けているのである。  また、彼のその声にしても恐怖に震えながら張り出したようで、過剰に強張ったその声はところどころ裏返っていた。――バーカ、などと胸糞の悪い爆笑がドッと起こる。絶対、絶対絶対絶対ぶっ殺す――いや、――「しょうがないなぁ」と一瞬でずぷんっ…モノを彼のナカにまた沈めた男に、ユンファさんは「んっ…」と小さく声をもらすと、またうなだれる。   「……は、…ぉ、おちんぽ…こんな汚い肉便器なんかにおちんぽ挿れていただきありがとうございます、…嬉しいです…うれしい…肉便器のご利用ありがとうございます…」    彼のこれはほとんど習慣的な感覚であるようだ。  例えば朝、職場に出勤した人が「おはようございます」とその場にいる人々へもはや心を砕くまでもなく、しかし社会的なマナーとして、角を立てず、自分の平穏を守る小さな積み重ねの一つとして、毎朝毎朝かならず挨拶をするといったような、もはや悲痛も何もない言い慣れた被虐的な感謝であった。…しかし、であるからこそ却って悲痛ではあるのだが。  男はユンファさんの背中から垂れ落ちた赤いリードの先のわっかを取ると、また片手に何周かその太い紐を巻き、しかし今度は紐にある程度の()()()をのこして握った。馬の手綱に見るようなたわみである。そして男は、もう片手でまた彼のお尻をパシンッと叩く。   「…ほら、じゃあ自分で動きながらもっとおまんこ頑張って締めて。こんなガバまんじゃボク、いつまで経ってもイけないよ? あーあ、あの子のまんこは物凄い締まって気持ち良かったのになぁ…」    嘘である――お前絶対ズタズタにしてぶっ殺すからな……。  いや…しばしばユンファさんを(はずか)める男たちは彼の性器を「緩い」と言うが、先ほどにも見たように、特段に太いわけでもない男に食い付く彼の桃色が、まず緩いはずがない。――しかし今のユンファさんは、自分を辱める者らが言うその傲岸不遜な言葉たちこそ、「真実」なんだと捉えるようになってしまっている。  そして案の定、ユンファさんは自分の膣のしまりが緩いというセリフを真に受け、狂ったように激しく腰を前後させながら、   「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、まんこガバガバでごめんなさい、精一杯まんこ締めますので、どうかお赦しください、…」    と慌てて赦しを乞う。彼は先ほど「お仕置き」と脅されてなかばパニックになっていた。  しかし馬鹿らしいことだが、そもそも具合の良い彼が「締める」と言ってそこに力を入れ、元より締まりの良いそこが更にぎゅうぎゅうとキツいほど狭くなったその状態で――更にいえば、当然オメガ男性の膣ともなると、その内部はなめらかというより高刺激的なヒダなどがあるはずであり――、あまつさえそのような場所でぐぽくぽ激しく扱かれはじめた男は、にわかに「あぁ゛っ」と苦しげに喘いだ。  却って()すぎたのである。慌てて男はユンファさんのお尻を叩き、「もっとじっくりちんぽ味わいなよ、失礼じゃないか、…」と余裕なく言う。   「……ご、ごめんなさい…は…――は…、……」    だが()()()()()()など知る由もないユンファさんは本気で『失礼だった』とまた自責し、男の望みどおりゆっくりと腰を大きく引いては、またゆっくりと腰をしずめ、ずぷぷ…とじっくり勃起を呑み込んでゆく。彼は何度かそれを繰り返した。   「はぁ…はぁ…これでい…如何(いかが)でしょうか……」   「……ん゛…ッ、ん゛ー……ッ」    ――しかし男はそれでも堪らなかったらしい。  結局男は「もういいよ、…」とあわてて彼のお尻を押し返すとモノを抜き、荒々しくアナルバイブを押さえる彼の黒革手袋の手を退かすと、すばやくその赤いバイブを抜き取る。そのバイブはスイッチを切られてカウンターテーブルへ置かれた。    そして男は片手で反り返った黒光りのモノを押し下げ、ユンファさんのアナルにずっぽりと根本まで挿入した。さなか男は「もうまんこじゃ緩すぎてイけないからこっちね」と、()()()()()()()()()を言って彼を責めた。挿入時におののきながらも声を殺していた彼はモノが体内におさまると、すぐ「ガバまんでごめんなさい」と謝った。  ――しかし実際は、男の自業自得で余計に刺激的になっていた彼の膣内よりか、締まりこそ良くともヒダなどの刺激がない彼の腸内でもないと、男が()()()()()()()()()()()をしかねなかったからである。    ほら動けよ、とまたお尻を叩かれて、ユンファさんはまたずぷっずぷっ…とお尻を前後させはじめる。その動きにあわせて、男の握る赤いリードの余分が、中腰のユンファさんの背中上の宙でくね、くねと妖しげにしなる。  そして前後に揺れている彼の下向きの横顔には、恐怖した(こわ)い笑顔が張り付いているままだ。   「ラッキーだったねユンファくん、ケツまんこまでちんぽで犯してもらえてよかったね」と奉仕されている男はニヤつきながら言う。   「はい、嬉しいです…ありがとうございます、…ケツまんこも気持ちいいです、ありがとうございます…、すごくうれしい、嬉しいです……」    ユンファさんの引き攣った笑みを浮かべた横顔、強いられた笑いに痙攣するその頬は薔薇色に染まっている。ゆら、ゆらっと、男が動かしていたときより大きく揺らぐ黒い横髪の影で火照った頬は引きつり、そこに浮かぶなめらかな玉の光沢もまたゆら、ゆらと水面にうつる月のように揺れる。  そして涙に光る彼の切れ長の目は、また虚ろな伏し目がちに戻る。   「バイブより、やっぱりナマちんぽのほうが善いもんなの?」   「…はい、気持ちいい…バイブなんかよりずっと気持ちいいです…ナマちんぽ気持ちいい…、はぁ…ナマちんぽ大好き…コレすき……すき……」    血の滲んだ赤いふくよかな唇は笑みながら淫蕩ぶったセリフを吐き、男をよろこばせるために媚びることを強いられた彼の腰も、男に迎合して前後に動く。    媚態(びたい)の様相を帯びていないのは――その目だけだった。  その伏せられた美しい切れ長の目だけが、ユンファさんの「意思」を映し出していた。    その瞳はあたかも虚ろである。  もちろん悦による虚ろではない。  また酔眼(すいがん)という意味での虚ろでもない。    しばしばユンファさんが「ラブドール」という擬似性交用の人形に見えていたのは、彼自身が自分に「無」を強いていたためである。彼はむしろ自らをラブドールだと思い込もうとしていた。  生命などない、生き物ですらない、肉塊ですらない冷たい模造品、血の通っていないシリコンの塊、痛みなど感じない、血など流れない、意思も考えも感情も「自分」も何もない、――人間に何をされても抵抗などしない、抵抗する術もないが、むしろ何をされても当たり前の存在、苦痛など、悲痛など、屈辱など感じようもない――だから、    自分は――ただのラブドール(性処理道具)だ。    だから――耐えられる。  その切れ長の目だけは、端正なるラブドールかのような虚ろさをたたえていた。目は開いている。美しい透き通った瞳も持っている。    だがその群青色の瞳は今、ガラスでできている。    何も見えない――僕には何も見えていない。  だから――耐えられる。    それはユンファさん自身に、自分をそのような無機物であると思い込もう、そう思い込むことで今を耐えようという意思があればこその、「虚ろ」なのである。    ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。  つまり悲しいことに、ユンファさんのその自分で自分を殺した「ガラスの瞳」こそ、今の彼に唯一許されていた「意思」であったのだ。  (せい)()えた(にお)いが充満した有機的なグロテスクな空間、臭く醜く浅ましい獣たちの中に唯一居る、――唯一()()、無機物の清潔な美しいラブドール。  その瞳から匂い立つ白檀(びゃくだん)――生に犯される死。    ユンファさんはその瞳を造り物のガラスなのだと、――その“タンザナイトの瞳”を安価なガラスなのだと、――そのように決め込むことで、自分を守っていたのである。    俺はこのユンファさんをPC画面越しに見ていて思った。――どうか俺に貴方の目を塞がせてくれ。もうこれ以上ご自分でご自分の目を塞がないでくれ。この俺にその両目を塞がせてくれ。俺の手のひらの下で、貴方がその美しい“タンザナイトの瞳”をそっと(いこ)わせてくれたなら、俺はどれほど幸せだろう。   「――俺は、貴方の目を塞ぎたい」と、俺は画面の中にいるユンファさんへ懇願した。    しかし、当然彼は俺のその懇願に応えなかった。  画面の中でユンファさんはただひたすら揺れていた。自分を犯す男を喜ばせるために、前後にゆらゆらと揺れていた。――今のユンファさんはラブドールだからである。   「…ユンファくんは何だっけ」と男の下卑た質問に、彼は答えた。   「僕はどうしようもない淫乱です…僕は常に発情している浅ましいメス犬…、変態マゾの僕の穴は全ておちんぽを扱くためにあります…、僕はただの性欲処理肉便器です…、どうかこの卑しい性奴隷のケツまんこに、たくさんザーメン排泄してください…」    ユンファさんは迎合的腰使いで自分を好き勝手犯している男を喜ばせた。ユンファさんは心にもない淫らなセリフで男を喜ばせた。――たとえ自分には喜びも何もなくとも、ラブドールの役目とは徹底して()()()()だからである。   「はは、…これじゃあ全自動オナホだね」    自分を喜ばせるユンファさんを「オナホ」とまで嗤った男は満足げに、ずぷっ…ずぷっ…と前後運動をしている彼のお尻を撫で回す。この男はむしろ、ユンファさんのそのラブドール的な哀艶の様相を気に入っている節がある。――麗しい美貌の人が自分の言いなりになり、かすかな反抗心さえ示さず、自分に絶対服従しているからだろう。   「はい、僕はただのオナホです…僕なんかでよろしければ、どの穴でもどうぞお好きにご利用ください…」   「…ふふっ……――ん…?」      そのとき――この男は、ふと(きら)めく()()()()()が目についたようである。      

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