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141 ※ ※モブユン

                 俺はこの夜空の帳に包みこまれた暗闇のベッドの上、四つん這いの体勢ながら頭だけをベッドへ下げているユンファさんのその細腰をつかみ、彼の豊艶(ほうえん)なお尻に恥骨を打ちつけている。すると、ギッギッギッギッギッとベッドのスプリングが一定のテンポで(きし)んだ音を立てる。  ……そうして俺にバックで犯されているユンファさんは、ベッドの上、その美しい横顔の近くに置いた自分のスマートフォンのマイク部分――長方形の底辺部分――にその肉厚な桃色の唇をよせ、いま通話中である電話むこうのケグリに「あん…♡」と甘ったれた嬌声をわざわざ聞かせてやった。   「あ、あぁ…♡ ご、ご主人様…♡ でもユンファ、切ないです…、すごく切ないの…、あん…♡ あぁ…子宮が切ないよぉ…――ご主人様のご命令に背くだなんて、ユンファ…絶対にそんなことしません…。でも…でもユンファ、頑張りますから…どうかお願いします…――ユンファ…頑張るために、ご主人様の声、もっと聞きたいんです…。はぁ…はぁ…♡ んん…♡ ご主人様の声を聞くとユンファ、おまんこいっぱい濡れちゃう…♡ それだけで、もっと頑張れるから……♡」    というユンファさんの声だけを聞けば、あたかもケグリへの健気(けなげ)で従順な恋心ゆえ、むしろその想いがどこまでも一途であるがゆえに今俺に犯されている彼が、その(あわ)れな自己犠牲的な愛情をそれでもケグリにせめて示している――愛するケグリの趣味のためだけに抱かれたくもない他の男に抱かれながらも、「僕が本当に愛しているのは貴方だけ(本当はこんなのもう嫌、だからせめて貴方の声で僕を慰めて)」とでも示している――かのような、…今彼はそうした悲劇的な、情緒的な、すすり泣くような甘ったるい吐息の声をもちいてスマホのマイクに――ケグリに――ああしたセリフをささやきかけたのだ。  ……が、しかし、そのような切ない声を出していたユンファさんの横顔は今や銀狼(ぎんろう)らしい鋭さを光らせ、そして彼のその美しい伏し目にもまたいつの間にやら聡明な涼やかさが戻っている。    先ほど「僕は不細工です」とケグリに言わされていたユンファさんは心から怯えきり、強いられるままその男へ隷属の態度を取っていた。それこそあのときの彼はまるで、怯えふるえながら降伏の(あかし)に仰向けになって急所の腹を見せてしまう犬のようだった。    ところが今はどうだ。  ユンファさんのその気高い銀狼の横顔、その冷眼の伏し目、鋭い切れ長の上まぶたの下にある、その揺るがない強い意志を宿した黒紫の瞳――。    俺はユンファさんのその高潔な冷艶(れいえん)の表情に戦慄(せんりつ)した。  ――今の彼のその気高い銀狼たらしき横顔にはある種男の傲岸(ごうがん)ささえ見て取れる。…いや、ともするとその人のその冷徹な目色には、ケグリに対する殺意さえ垣間見えるようなのである。    ユンファさんはケグリが自分に求めている「理想的な虚像」を正確に把握している。――それとは()()()()()()()()女だ。  そもそもケグリは己れが男というだけで、女相手にならば自分は畢竟(ひっきょう)優位に立てるだなんぞと(おご)った噴飯物(ふんぱんもの)の勘違いをしている。――しかしケグリがユンファさんに求めている「理想的な虚像」というのは、厳密にいえば()()ではない。  ……それはなぜか?    ケグリはあれで根っこの部分では、(ケグリがひがむ世の若い男性たちのみならず)世の女性たちにも己れが劣ると自覚しているためである。ましてやケグリはまず世の女性たちにも自分なんかは相手にされない、それどころか、自分は女性たちに猛烈に拒絶されるということも潜在的に理解している。    いわばケグリとっての女性という存在は、いくら見下していようがあなどっていようが「安全な存在」ではない。ケグリは性差別的に見下している女性たちにも脅威を感じている。  よってケグリが完全に己れよりも劣っている、完全に己れが優位に立てるだなんぞとすっかり安心していい気になれる存在、――ケグリがユンファさんに求めている「理想的な虚像」、それというのは――(それでなくともケグリがあなどっている)女性という存在よりももっと劣る「メス」、その「メス」という概念に当てはまる無脅威な、飼い馴らすにもたやすい従順な存在である。    そしてそのことを(さと)く把握しているユンファさんは今、ケグリに(かしず)くほどその男に一途な想いを寄せているメス犬、媚態をもって想い人に気に入られようと尻尾を振るメス犬、その「ケグリのメス」を演じはじめた。  ところがその「ケグリのメス」の正体というのは、そのメス犬しぐさでケグリのことを(あざむ)こうとしている気高き聡明なオスの銀狼――今やユンファさんは、俺が惚れ惚れとするような誇り高き騎士の信念をもって、――俺とのこの共謀を成功させるために――「ケグリのメス」を演じはじめたのである。     『…………』   「…あっ…♡ んぅ…♡ ご、ご主人様…?♡ ユンファ寂しいです…♡ …ご主人様の声、ユンファに聞かせてください……♡」    と冷ややかな伏し目のユンファさんが、途端に黙り込んだケグリをいぶかりつつも甘い声でその男の発言を促しながら、上半身にまとったままの自分のカッターシャツのボタンを上から一つ一つ開けてゆく。  ……いや、もちろんまさかユンファさんのその気高い表情が見えているはずもないケグリは、その甘やかな哀艶(あいえん)の声でつむがれたそれらしいセリフに、まんまと欲情したのである。――たしかにその男は途端に黙り込んだ。…しかしゴソゴソ、ガサガサとユンファさんのスマートフォンのスピーカーからは、ケグリの()()()()()()()()が聞こえてきている。   「…はぁ…はぁ…♡ ユンファのメス子宮…ケグリ様の色っぽい声でいっぱいに満たしてください……♡」    ここでどうやら()()()()()()()()()()らしい。その男は『グフ、…』と気味の悪い笑いをこぼすと、   『…はぁ…何だ、ユンファ…んん…? はぁ…お前まさか、私の声だけでまんこぐちょぐちょに濡らしてるのか…?』   「……、…」    キッショ……俺はギッギッギッと腰を振りながらも呆れかえって瞳を真上へ向ける。  ……何というかまあ…どのような男にもやはり、どこかしかに単純なところ――言い換えればバカなところ――はあるものである(もちろん先ほど()()()()を起こしている俺も人のことは言えない)が、それにしてもこの男のこの滑稽さには呆れて物も言えない。    まんまとノせられたケグリに、ユンファさんのその美しい横顔がわずかにほくそ笑む。   「…んぅ…僕恥ずかしいよぉ…♡」   『はぁ…何が恥ずかしいだ、このバカヤガキめが、…“ご主人様の声だけでおまんこぐちょぐちょに濡らす淫乱でごめんなさい、ユンファは淫乱です、ユンファは淫乱メス奴隷です”だろうが、…』    こうケグリがあきらかに興奮した男の(キモい)息づかいでそう言うと、ユンファさんは俺に後ろからギッ…ギッ…ギッ…と突かれるその動きに合わせ、なまめかしい声まじりにこう応えてやる。   「…あん…♡ あぁ…んぅ…♡ あっ…♡ ご、ご主人、さまの…声、だけでぇ…♡ おまんこ、ぐちょぐちょに濡らす…淫乱で、…ごめんなさい…♡ はぁ…♡ ゆ、ユンファは……ユンファは淫乱です…♡ ユンファは、ご主人様の…淫乱メス奴隷です…♡」   『っはぁ、このクソオメガが、…電話でまで私のちんぽに媚びおって、このザーメン処理便所が、…』   「……っ、……」    俺は腰を動かしながらもつい吹きだしそうになったが、ぐっと唇に力を入れ、さらに顔を仰向かせながら息を止めてこらえる。俺の腹の底でふつふつと沸きたつ笑いを必死にこらえているせいで、かーっと俺の耳たぶや頬が熱くなってゆく。――ユンファさんのその甘く切ない声と、その人の横顔の冷めた苦笑いの対比に気がつかないケグリは、どうもシコシコぬちょぬちょと()()()()()()()らしい。何と滑稽な……。   『私の声を聞くとお前のどこがどうなるんだ。言ってみろユンファ。…』   「んっ…♡ んう…♡ …うぅ……♡」    ユンファさんはあたかも恥ずかしがっているように可愛らしくうめくだけですぐには応じない。――これはケグリを焦らしているのだ。さんざ(ののし)られてはいるが、俺が側にいるからか、あるいは電話越しだからか、もしくはその人の意志の強さ、信念がゆえか、すなわち今の彼にはそれができるだけの余裕があるということである。   『…ほらユンファ…恥ずかしがらずに言ってごらん…? 怒ったりしないから……』とケグリが唐突に(気色悪い)甘ったるい猫なで声を出す(ユンファさんの嬌羞(きょうしゅう)の演技がツボだったのだろう)。   「んうぅ……♡ ぼ、僕…ケグリ、…()()()()の声、聞くと……」   「……、…」    ユンファさんに感心する俺の片眉が上がる。  ……ユンファさんは頃合いを見てケグリのことを「ご主人様」や「ケグリ様」ではなく、「ケグリおじさん」と呼称したのである。  そしてユンファさんはギッギッギッと俺に後ろから突かれながら、カアっとその頬を赤らめる。   「ゆ…ユンファの、子宮が…きゅんきゅん、じ、じんじんするの……♡ ユンファの子宮…排卵日前の、敏感な子宮に…ケグリおじさんの低い声、じわぁって響くから…♡ …だからユンファ…ケグリおじさんの声を聞くと…子宮から、ユンファのおまんこ…とろとろに濡れちゃうよぉ……♡」    言いながら(羞恥心に(さいな)まれて)苦々しい笑みを浮かべているユンファさんの――といっても俺からすると頬を紅潮させたその表情さえ色っぽく思えるのだが――、このあえてのどこか幼げなセリフは、なるほど彼がケグリのことを「ケグリおじさん」と呼んでいた頃から(おそらく美少年ユンファの頃から)、彼に執着しつづけてきたケグリの男心をまんまと歓喜させた。   『…はぁ…っユンファ君、…ユンファ君、…』    ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ、……   「…ぐぅ゛ッき……ッ!」    しかしそれにしても気持ちわr…いや、……俺が思わず吐き気をもよおしながら本音をもらしかけたなり、それをかき消すように慌ててユンファさんが、   「あ゛っ! っああ、あんっ…!♡ あぁケグリおじさん、ケグリおじさん…っ!♡」    と、俺の失態を喘ぎ声でごまかしてくれた(申し訳ない)。  危なかった…――しばらくは(おそらくは経験則から)ケグリを(おだ)てるに長けているらしいユンファさんに任せるとして、俺のほうは彼のことをサポートする程度に、もし俺が発言をするにしても状況をきちんと読んで、…少なくとも今はこの口に鍵をかけておこう(今はどうも暴言しか出てこない)。  ……しかしケグリもはたと自分の「ご主人様」としてのお体裁を思い出したのだろう、――そのくせぬちょぬちょと気味の悪い音はやまないが――このように取り繕いはじめる。   『ま、全く…お前はどうしようもない淫乱メス奴隷だよユンファ…、なあ? さんざん言葉責めをしてやった私の声だけでも感じるようになったとは、…グフフ、やっぱりお前は根っからのヤガキ、所詮ちんぽ無しでは生きていけない根っからの淫乱だったのだよ、…なあユンファ、私に飼ってもらえてよかったな。…そうでなきゃ、その快楽さえお前は知らないまま死んでゆくところだったんだぞ…』   「……、…」    このボケ茄子(なす)変態親父が……絶対殺す。  ……俺はユンファさんのことが心配になり、また彼の背中におおいかぶさって、うしろから彼の上半身を抱きしめる。   「っあぁ……♡♡ お、おっしゃる通りです、ご主人様……っ♡」    …と、こうは言いつつも、しかし思いのほかユンファさんは傷ついている様子ではなく、チラと俺を冷静な横目で見ては――『僕は大丈夫ですよ』――ふ、とやさしげに俺に微笑みかけてからまたふと目を伏せる。   「……、…」    不意にきゅんとしてしまった、……やっぱり綺麗だな、ユンファさんは…――。  ……いや、ユンファさんに見惚れている場合ではない。――俺はギッギッギッギッギッと彼のお尻に素早く恥骨をぶつけつつ、彼のボタンがすべて外されたカッターシャツの布の下、そのお腹やみぞおち、あばらのなめらかな皮膚を撫でまわす。   「…ぁ……♡ は、♡ …っん、…っごしゅじんさ…♡ ぅ……っ♡」    するとユンファさんの眉目が色っぽく(かげ)り、彼は下に敷かれている白い羽毛ぶとんをきゅっと握りしめながら肩をすくめる。俺の手のひらに伝わってくる彼のなめらかな肌がぞくぞくと粟立つ愛おしいざらつき、その皮膚の下でピクピクと官能的に収縮している筋肉、……   「……っ♡ ん…♡ 僕、し…しあわせ…です…♡ きもちいい……――っこと、…きっきもちいいこと、…たくさん、たくさんご主人様に教えていただけて、…」   「……、…」    ユンファさん…――今彼は俺の愛撫に感じてくれているばかりか、俺の愛撫の心地よさに「幸せ、気持ちいい」とまで甘えてくれた……好きだ。愛している。  大変……これにはそれでなくともみなぎっていた俺の欲望の脈動がより勢いを増してしまう。    そしてここでユンファさんが興奮したように――あるいは先ほどのとろけた自分の失敗を誤魔化すように――自ずから腰を動かしはじめたので、俺のほうは動きを止める。  小きざみにそのお尻を俺の恥骨に押しつけては離れ、…するとベッドのスプリングがギッギッギッギッギッと激しく鳴りひびく。   「ご調教いただけて、…あっ、あん…っ、あん…おっしゃる通りです、ユンファはどうしようもない淫乱メス奴隷です、ご主人様…っ、ユンファ、ユンファ…ケグリ様に飼っていただけて今本当に幸せなの、♡ ユンファは、貴方様のおちんぽ様無しではもう生きてゆけない、ケグリ様のメス奴隷です……!♡」    ――しかしケグリは直感していた。  恋というのには往々にして、ある方向の人の直感の感度を鋭敏にさせる副作用がある。――すなわちケグリはこう直感した。今のユンファさんの甘い「幸せです」というのは己れに向けられたものではない。…それどころか彼のそれは今、ユンファさんを抱いているアルファ男(俺)に向けられたものである、と。   『…何が私のメス奴隷だ、…今だってアルファのちんぽで()がっとる癖してこの淫乱が、…』    とケグリがまた不機嫌な低い声で怒鳴るように言う。   「……はぁ…はぁ……」    するとユンファさんが腰の前後の動きを止め、まるで耳を立てて獲物の動向を慎重にうかがっている狼のように、聡明な伏し目でケグリのセリフに耳を澄ましはじめる。   『淫乱まんこでちんぽに媚びるしか能のないヤガキが、…ほんとはアルファのちんぽ挿れられて嬉しいんだろうユンファ、今だってその便器まんこでアルファに媚びてんだろうが、ええっ? 言ってみろ、そのアルファのちんぽと私のちんぽ、どっちがイイんだっ?』   「……、…」    面倒くさい男。  というか本当に頭が悪い。――まあ俺がいまだ何ら発言をしていないせいもあろうか、ケグリはあるいは俺たち側の設定がスピーカーモードではなく、ユンファさんのみに聞こえる設定になっている(彼がスマホを耳にあてがっている)とでも勘違いしているのかもしれないが――己れのこの暴言が俺に聞こえていた場合を考えないこの浅慮(せんりょ)さ、やはり脳タリンはこいつである。    さて一方のユンファさんは自分の片方の乳首をくりくりといじりながら、その快感からの本物のなまめかしい声でこう言う。   「……ぁ…♡ あぁぁ…♡♡ ご主人様ぁ…♡ その色っぽい声で、もっとユンファのメス子宮いじめてください…♡ ユンファのまんこもうメスイきしそうなんです、ぁ…♡ ぁ…♡」   「……、…」    ゴク、と俺の喉が鳴った。……ヤバい、エロい。   『善がってないで質問に答えろユンファぁ! 私のちんぽとそのアルファのちんぽ、お前はどっちがイイんだ!』    ケグリのこの音割れした怒鳴り声にも今のユンファさんは動じない。――相変わらずその薄桃の乳首を自分でいじくり、じわ…とその頬を赤らめながらも、このようなことを恍惚とした声で言う。   「…んぅ…♡ ユンファはぁ…ユンファは…♡ ケグリ様のおちんぽ様が一番すきですぅ…♡ ユンファは…正真正銘、貴方様だけの従順なメスです…♡ だから…だから僕…貴方様のご命令で、いつも他のおちんぽにまんこお使いいただいているのにぃ…――ご褒美に、ケグリ様の一番大好きなおちんぽ様が欲しいからぁ…、だからユンファ、いつもどんな人とでもセックスしてるのにぃ……」    するとケグリはまた(チョロいことに)すぐに機嫌を直し、得意げな声でこう言う。   「このバカマゾ便器が…まぁた馬鹿になったのか…? それでなくとも私のちんぽのことしか考えてない脳タリンの癖に、私に酷くされればされるほどそうやって馬鹿になりおって……』   「…んぅぅ…ごめんらさい…♡」 「……ふ……」    チョロいね。  ……と、ここでユンファさんが、彼の背中に覆いかぶさったままの俺のことをチラと横目に見、   「……、…」    ふと目配せするように目を伏せ、それから俺の片手を自分の胸――粒だった乳首――へと導いてから、再び俺の目を潤んだ紫の瞳で見やる。   「……、…」   「……っ?」    えっ…――ユンファさんのその目は『すみません…僕の乳首、いじってくださいませんか…?』と遠慮がちに俺に頼みこんできている。  ……俺はこの僥倖(ぎょうこう)にも一瞬ためらったが、もちろん(何ならラッキーとまで思いつつ)すぐ、まずは彼の粒だった乳頭の先を両方、人差し指の先ですりすりとこすってみる。   「……ッぁ…♡ ……く、…ん…っ♡」    すると官能的に眉目をこわばらせたユンファさんは、ひくっ、ひくっと腰を小さく跳ねさせながら本物の嬌声をあげる。   「……んっ…♡ んぁ…♡ ご主人さま、♡ ぁ、ご主人さまぁ…♡ もっとぉ…もっとユンファのこといじめてくらさい…♡」   「……、…」    なるほど――ユンファさんはセックス中、およびそれにともなう絶頂の演技をよりそれらしくするため、俺に乳首を愛撫してほしいと頼んできたようだ。…というのも、彼のその瞬間の声を聞きなれているケグリであるので、本当に絶頂するまではせずとも、まったくの快感なしの「完全な演技」ではさすがにケグリを騙しきれない、と彼は判断したのである。  ……まあしかし――電話越しというのもあれど、()()()()()()()()ケグリにそこまでの分析力があるとも思えないが、とはいえ安牌(あんぱい)を取るに越したことはないのも確かだろう。   『グフフ…ふぅ、ふぅ、このちんぽ奴隷が。お前のまんこもケツまんこも口まんこも、お前の全てはもう一生私のものなんだぞユンファ、いいな、…お前はもう一生私の所有物なのだよ。…』   「…………」    ――絶対ぶっ殺すからなケグリ……。  ユンファさんは俺だけのもの、決してお前のものではないのだ。……いや、ここにケグリはいない、ここにはユンファさんしかいない、俺のこの憤怒はユンファさんにかかわりがない――Just be calm.No problem,It's not he headache.(ねえ落ち着いて。問題無いよ、それは彼の問題ではないのだから。)  そう、今は落ち着こう……何より今癇癪を起こしてしまえば、ユンファさんのためにならない。   『ユンファ、お前はあくまでも私のメスなんだから、今挿れられているちんぽを私のものだと思いながらみっともなくメスイきしてみせろ、…』    と得意がって言うケグリ、その後につづくだろうユンファさんの演技に合わせて、俺は彼のピアスが着いた乳頭をどちらも人差し指の側面でピンピンとはじきつづける。…するとびくっ、びくっと丸まる彼の腰に腹を軽く打たれるが、……それにしても大変だ。これはまずい。   「ァ…っ♡ んぁ…♡ あぁ…はい、♡ はいご主人様…♡ ありがと、ございま……あぁユンファのおまんこイく、♡ ケグリさまの声でイきますぅ…♡ ユンファ、ユンファもうイきそうれすご主人さま、♡ ユンファのおまんこ、♡ ゆ、ユンファのマゾメス子宮イきそうれす…っ!♡ ィ、イッてもよろしいでしょうか…?♡」    ユンファさんの舌たるいこれは確かに本気で快感を得てはいるものの、本気でここまで彼の頭がとろめいているわけではない。現にその人の伏し目は色っぽい火照りがにじんではいるが、その目もまだ明瞭な怜悧さを損なっていない。つまりこれもまたケグリを騙すための演技である。   『この変態が。私の声だけで(みじ)めにイけ、私に懇願しながらイけよクソヤガキが。…』   「…はいっはい、ごしゅじ、…さま、♡ ありがとうごらいましゅ…っ♡ ありがとうござ、…ますケグリさま、♡ あん…ユンファのマゾ子宮イかせてくらさい…っ♡ ユンファは肉便器です、ユンファは肉便器です、このどうしようもない肉便器まんこイかせてくらさい、♡ メス奴隷ユンファの子宮を、っご主人さまのおっきい立派なおちんぽ様でいっぱい突いてイかせてくらさい…っ♡ ユンファメスイきしたいれす…っ♡ メス子宮でみっともないメスイきしたいれす…っ♡」   「…………」    普段からこんなことを言わされているのか、可哀想に――などと俺は眉間を曇らせながらも、とにかくユンファさんの乳首をつまんでしごいたり、つまんだままくりくりとやさしくすり潰したりと、彼の両方の乳首への愛撫をやめない。   「…ぁ…っ!♡ ぃ、…きそう……♡ ん、んん…♡」    しかし――割と本気で感じはじめているユンファさんは、苦悶げにきゅっと目をつむると、ぎゅう、白いかけ布団を握りしめながら、は…は…と喘いでいる。   『…ユンファ、どこがイきそうなんだ。』   「ぁ、♡ …ちく、…し、…子宮、♡ ゆ…ユンファの、排卵日前の…敏感な、…メス子宮…が、♡ ご主人、さまの、声だけで、…ぃ…イきそうです…。ご主人さまの立派なおっきいおちんぽ様に子宮突かれ、♡ んっ…いっぱい突かれて、ぁ…♡ ぁ…♡ いく…♡ いく…♡ …っ僕の子宮乱暴に突きながら、ユンファの雑魚マゾ乳首思いっきりつねってください…っ!♡♡」   「……、…?」    これは、…俺に言ったことなのか――?  はたまたこれもまたユンファさんの演技、すなわちケグリの欲望を掻き立てるための隷属的リップサービスか――?   『そうだな…、どうしようもない変態マゾのユンファは、変態子宮突かれながらその雑魚乳首を思いっきりつねってやると、すぐにイくもんなぁ…?」   「は…っ♡ んん、♡ はい…、ユンファのピアスつけたやらしい雑魚乳首、…ユンファのモロ感雑魚乳首、千切れるくらい思いっきりつねってくらさい……っ!」    とユンファさんが腰を揺らしながら、自分の乳首にある俺の片方の手に自分の熱い手を添えてくる。そして彼は潤んだ半目開き、その切ない哀願の横目で俺を見やると、『乳首つねってぇ……』となまめかしくその肉厚な桃色の唇を動かす。  ……い、いいのだろうか、…しかし、……   『ほら早くみっともなくメスイキせんかユンファ、私に惨めなメスイき声聞かせてみろ…!』   「は、はい…っ聞いてくらさい、ユンファの惨めなメスイき声聞いてほしいれす…っ♡ 聞いてくらさいご主人さまぁ…っ♡ あぁイく、ケグリひゃまのおちんぽれユンファのおまんこ惨めなメスイきしまひゅ、♡ …ァ、♡ …ァ、♡」    しかし……思いっきりつねる、という行為にはさすがに逡巡(しゅんじゅん)している俺が、ひとまず彼の乳頭の先をカリカリと爪先で引っかいていると、ユンファさんがビクンッ…ビク、ビク、と腰を跳ねさせ、色っぽくその端整な黒眉をひそめる。   「あぁイく、…ユンファの子宮イイの、おっきいちんぽで子宮突かれてイく、♡ イくイく…♡ ユンファの子宮突きながら乳首つねってください、おねがいします、つねってください…痛いの気持ちいいから、おねがい、ユンファの雑魚乳首つねってぇ……♡」    とユンファさんが眉をひそめたまま、悲しげな懇願の目色で俺を見ながら甘えた声で言ってくる。   「…っあぁユンファのマゾまんこイかせていただきま、――は、……ァん…ッ!♡♡♡」    途端、――ユンファさんがぎゅうっと目をつむり、ビクンッ! と腰を跳ねさせながら、深く肩をすくめて縮こまる。   「……、…」    ……結局俺はユンファさんの乳頭を両方、ぎゅうっと指先で押しつぶし、かるくひねり上げたのである。もちろん力加減はしていたのだが――さすがにアルファの力で「思いっきり」はまずい――、……いずれにしても、彼はどうやら本当に絶頂してしまったらしい。  ……絶頂中のユンファさんが火照ったその恍惚顔にとろけた微笑を浮かべ、その半目開きのまなじりに寄せた潤沢な紫の瞳で俺のことを見ながら、こう言ってくる。   「…は、ァ…♡ ぁん…♡ ぁぁ……♡ ゆ…ふぁ、イッ…ます…ご主じ、…さま…♡ ゆ、ユンファのおまんこ…しきゅ、で…イッてます…、ぁ…しあわせれす…♡ あ、ありがと…ございます……♡」   「……、…」    俺はまたゴクリと喉を鳴らした。  ――このセックスはあくまでもケグリをだまくらかすためだけの行為だが、……これは俺まで大変だ。                ×××   ×××   ×××   (こちらは「鍵」にも掲載したお知らせのため、そちらにて既読の方は読まれなくとも大丈夫です…! 「目」の更新のほうも遅くなってしまってほんと〜〜にごめんなさい…っ!)      皆さまお久しぶりでございます、いつもお読みいただき&応援のほういつも本当に本当にありがとうございますm(_ _)m♡    そしてだいぶ更新のほう間があいてしまって本当に、ほんとうに申し訳ございません…っm(_ _;)m    今回なかなか更新できなかった理由はですね、実は僕がスランプに陥っていたわけでも、自身の遅筆に悩まされていたわけでも、また僕自身の体や心の調子が悪かったわけでもなく(もしご心配いただいていた方がいらっしゃいましたらほんとうに申し訳ありません、僕はぜんぜん大丈夫です…!)、実は私生活のほうでまたまたすさまじい大変化がございまして、そちらの対応に集中せざるを得ない状況におかれていたため、シンプルに筆をにぎる時間がなかったせいです。    いや、まあある意味不調といいますか、その変化のせいで胃を痛めてはおるのですが……(白目)  僕も本当は書きたくて書きたくてたまらず、むしろ書けないことにストレスを感じていたくらいでしたので、やっと書ける〜〜(泣)という感じです(´;ω;`)    ただ、一応のところはその私生活の変化も落ちつきを見せてはいますものの、もしかするとまた更新の間があいてしまうようなこともあるかもわかりません。が、僕としては、ここからはなるべく、また以前のように執筆・更新のほうに集中してがんばっていきたいと思っております…!    またなかなか更新できないなかで、もしご不安になられてしまった方がいらっしゃいましたら、本当に申し訳ございません。僕じつは以前にスランプというかなかなか話がまとまらなくて数カ月あけたアホクリエイターだったりもするんですが(※前科あり)、マジで何も言わずにトぶことだけはせんのでそのあたりだけはどうか信じてください…!(泣)  僕もある程度のところで、きちんとその旨(私生活が吐きそうなくらい多忙)を皆さまへお知らせしなければ、とは思っていたのですが、もはや近ごろは朝起きてから眠るまでほとんどその変化の対応に追われておりましたもので、それもできずじまいとなり……本当にごめんなさいm(_ _;)m    しかしそのような中でも、何も言わずにそっと作品の更新をお待ちくださっていた皆さま、またなかなか更新ができなかったというのに、その中でもリアクション等で応援のお気持ちを送りつづけてくださった皆さま、本当に皆さまやさしすぎ、本当に本当にありがとうございますm(_ _)m♡♡♡    鹿引きつづき精いっぱいがんばっていきますので、よろしければまた応援していただけたらとってもとっても幸いです…!!  きっと皆さまの中にも、今大変な変化を迎えられている方がいらっしゃるのではないかと思いますが、僕の作品が皆さまの日々のちょっとした楽しみになれますようにって引き続きバリバリバリバリ(※エナドリ代わりに鹿せんべいをむさぼる音)がんばります、皆さまどうか途方もなく幸せであれえええ……!!      🫎藤月 こじか 春雷🦌

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