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148 ※ ※モブユン
「まあそいうことやさかい……僕の赤ちゃん、大人しく妊娠しよかぁユンファ……」
そして俺はあらためて腰を動かそうと構えた。が、
『はぁっはぁ、そんなことより早くユンファの危険日まんこに中出ししたいなぁ、ユンファの子宮ちんぽでガン突きしたい、私の子を孕ませたい、――あーイくイくイく…、〝遠慮なくユンファの危険日まんこに射精してください〟と言えユンファ、…』
「……、…」
は? そんな、ことより……?
このケグリ、つくづく……愛するユンファさんより己れの快楽、その射精を――もっといえば自分にとってより快 い射精を――優先し、むしろ恣意 的なそれをしか考えていない。
「で…でも…、う…っ――え、遠慮…なく…、ユンファの…危険日まんこの、なかに、…射精してください……」
ユンファさんは無感情的な目を伏せたまま、その声にばかり切ない涙をおびさせてそう従った。――するとノイズまじりなグチュグチュと激しい不愉快な音が、彼のスマホのスピーカーから聞こえてくる。
『あーーそろそろイきそうだ、イってもいいかいユンファ君、…あーユンファのいやらしいパンティにザーメンぶっかけるよっ…! ユンファの大好きなザーメン、あとでパンティについた私のザーメン舐め取らせてあげるからね、――射精していいよね、…』
……ケグリは要するにこれで「射精を許せ」と言いたいのであろう。――先ほどユンファさんから「オナニーなんかしちゃ駄目♡ ザーメンは僕のために溜めておいて♡」だなんて(幸せな)射精禁止を言い渡されはしたものの――しかし結局は、少なくともこのたびにおける射精は我慢できないのである。…当然だろう。この男はそもそも自分以外の誰をも、何をも本当には愛してなどいないのだ。
したがってケグリは「むしろ自分が射精したほうが君も嬉しいだろう」だなどと、あたかもユンファさんのために射精するんだ、というように己れの射精をどこまでも身勝手に正当化しつつも、しかしあくまでもユンファさんに己れの射精の許しを乞 うている。
――とするとこの男、潜在的にはやはりかなりのマゾヒストと見える。
結局本当は世にもまれな美貌をもつユンファさんに翻弄され、支配され、主導権を握られたい、骨の髄 まで彼の虜 になりたいとの願望が透けて見える――そうでないなら彼に射精許可など乞わない。それこそ通話を切ってからでも何でも、彼に隠れて勝手に射精すればいいだけの話だからである――。
……しかしそのセリフの内容というのはつくづくおぞましいものだが、――ユンファさんもその黒い秀眉をわずかに曇らせはしたが、――「うん、嬉しい…♡」と、あたかもその声ばかりは嬉しそうにケグリのそれに答える。
「イっていいよケグリおじさん…、僕のパンティにいっぱいおじさんのザーメンぶっかけて……」
『あーイくっ…! あとでザーメン舐め取りながらオナニーしなさい、…ユンファがいやらしいせいでオナニーさせてごめんなさい、お詫びにユンファもオナニーしますと謝りながら、おまんこクチュクチュしなさい、わかったね、』
「あっ…あぁ、♡ そんなの興奮しちゃうよ……! ケグリおじさんっ…――わかった、あとでお詫びのオナニーするね…♡ ケグリおじさんを誘惑して勃起させちゃうような淫乱のヤガキでごめんなさいって……」
『ああっ出すよ、…っユンファの危険日まんこに種付けするつもりで射精するよっ…ほら、』
「……、…」
まあいいか…とりあえず射精させておこう。
そう時間がかかりそうな様子でもない――今ケグリは完全に「頂上」まであと数歩と急ぎ足にそこを目指している状態だ――し、またかえって今のいい気分で射精させ、すがすがしい心持ちになったケグリに対して俺がさらに噛ませ犬を演じてやったほうが、より効果的にケグリの気分を盛り立てられることだろう。
そして、それはユンファさんも同じように推量していることである。彼は冷厳な伏し目がちながら、声ばかりは甘くささやくようにこう言う。
「うん、うんケグリおじさん…♡ ユンファの危険日まんこのなかをケグリおじさんのザーメンでいっぱいにして…♡ 僕の子宮にいっぱいザーメンぶっかけて、ユンファを妊娠させて……♡ はぁ…はぁ…♡ ユンファを孕ませて、ユンファに種付けしてぇ…♡」
するとケグリはラストスパートをかけ、グチョグチョと荒々しい音を立てながら、鼻息荒くこうしたことを矢継ぎ早に言う。
『ユンファっケグリおじさんの赤ちゃん孕みなさい、…ほらなかに出すよ、ユンファの綺麗なまんこをおじさんのザーメンだらけにしてあげるからね、…ああイくよ、イくよユンファ、ユンファの危険日まんこのなかに子種汁いっぱい出すよ、妊娠するんだ、ユンファは私のものだ、ユンファ、排卵日子宮で私の子種受けとめなさい、ユンファの危険日まんこのなかにいっぱいザーメン出してあげるからね、ユンファの子宮にある卵子は全部私のものだ、きちんとおじさんの子妊娠するんだよユンファ、…』
「…………」
俺はストレスからゴキュリと喉を鳴らした。
……いや何というか…実際のセックス中にこのやり取りをしているのならばまだしものこと、これというのがあくまでもテレフォンセックスであれば、あきらかにユンファさんのこれが「(ケグリの射精を快くするための)演技」であることなど、ケグリとてもどこかではわかっているはずだが――まあ射精間近のこいつにそんな客観的な羞恥心などあるはずもないか――それにしても、…
「……はい…、妊娠…させてください……」
ここにきて、ユンファさんのそのうつろな伏し目があまりにも暗い。――『帰ったら僕…、本当に…いよいよ…妊娠…させられる……かも、しれない……』
「……、…」
彼はあくまでも自分の身を守るために、あたかも妊娠を希 うような阿諛 のセリフを口にしてきたが――それを今回も多く口にしてきてしまったことが仇 となる気配に怯えている彼は――当然、
『…ああああ〜〜イくっ…! 受精しろ、孕め、私の子種で孕めユンファあぁぁ…――っ!』
「……、…」
まあとまれかくまれ……どうやらケグリはやっと射精したらしい。――俺は嘆息をぐっとこらえた。
ザラザラとしたノイズとなっているケグリのはぁはぁという吐息、この沈黙の間にあきれ返っている俺と、俺に組みしかれている体勢で伏し目がち、ケグリの次の出方を耳をそば立てた聡明な狼のように慎重にうかがっているユンファさん――シュコ、シュコシュコとケグリがティシューを引き出している音が聞こえた。
『はぁ、はぁ……おぉしこたま出たな…、ユンファのパンティが私のザーメンでネチョネチョだぞ…? 大好きな私のザーメンで自分のパンティ汚されて嬉しいだろう…?』
「…うん、ありがとうケグリおじさん…、ユンファのパンティを…その、ケグリおじさんのザーメンでいっぱいネチョネチョに汚してくれて…――おじさんに見られながらそれでオナニーするの…、僕…すごく、楽しみ…だな……」
と言うユンファさんのその目を伏せた顔は、もはや嫌悪すら立ちのぼっていない。完全なる諦観から無感情につとめている――しかし、怯えたような泣き出しそうな儚 さをたたえてもいる…――俺は、
「……っ」
奥歯を噛みしめ、ここはぐっとこらえる。
何もこれに限られたことではないが、ケグリはおぞましい性的倒錯に対する異常性を自覚していない――いや、たとえその男が自分のその異常性を自覚していたとしても――ユンファさん相手であればその異常な性欲をぶつけてもよい、彼の心身を己れのその勝手なそれを満たすためだけに使ってもよい、自分の性奴隷である彼にならば何をしてもよい、彼にならば何をしても許されるだなんぞと、ケグリは思い上がっている。…冗談ではない!
今夜のうちに貴方を拐 ってしまいたい――それができたらどんなにいいことでしょう?
いつかこいつは俺が絶対殺してやるからね…――だが今は、あくまでもユンファさんのために……。
「……、…、…」
ユンファさんの、…ために、…こらえるのだ。
ぽた、と俺の青白く光る瞳から落ちたしずくが、うつろな――美しい人形のような――眼差しで俺を見上げてくるユンファさんの、そのほんのりと色づいた下まぶたの下に落ち、つ……と頬骨のほうへ伝い落ちてゆく。
「…………」
「……、…」
ユンファさんのその美しい顔は、俺を見てあまりにも優しげに微笑しているようにも、もう何も感じられなくなった無表情のようにも見える。歪まない。眉を寄せることも、切望や悲観の目つきをすることもない。しかしその紫のうつろな瞳は――まるで恐ろしいあの「処女受胎」の宣告を受けた聖母マリアのように、…夫の子を身ごもる覚悟の決められていたその場所に、不測のうちにも得体のしれない子どもを宿したその聖母のように――自分に神が課したその運命に対して「諦める」という、それさえも神の思 し召 しだ、という、何より落ち着きはらった受容をやどした、あまりにも悲しい瞳であった。
「……、…、…」
もう十分だろう。
俺は少しのあいだ、彼のそのうつろな切れ長の目と見つめ合ってしまったが、
「……ふ、また性懲りもなく…、もう堪忍してくださいよ…」
そろそろピリオドを打たねばならない。とユンファさんの脇の下から両腕をまわし、彼のことを強くかき抱く。
「はぁ…ほなそろそろ僕もこの肉便器のなかに出しますさかい…、すんまへんご主人……」
すると――射精後ともあって冷静になった――ケグリは『あぁ、はい』とすぐに応答した。
だが、こう言うこの男のその声はなにか優越感にまみれた猫なで声、それも上機嫌な気色の悪い笑みが含まれている。
『…これはすみませんお客様、うちの変態マゾメス奴隷が失礼なことばかり…――いやぁそいつ、排卵日近くなるといつもこうでしてねぇ…。そりゃあもう大変なんですよ、…お前は性奴隷なんだから選り好みなんぞ贅沢な真似をするなと言っても、なかなか聞かなくて……』
「あぁ…そら大変ですねぇ……」
殺す…これこそは愚痴風自慢、というやつではあるが、それはすなわちこの俺とユンファさんとの「共謀」が――いや共謀とはいえ、不甲斐なくも、ほとんどはユンファさんが身を切ってくれたおかげで――成功した、ということをあらわしている。
『それで、そのバカオメガが今のようにぐずるときは、私はああしてひとまず可愛がってやるんです。もちろん性奴隷の仕事をさせるために…――身の程を弁 えるよう調教してはいるつもりなんですが、まだまだ…、ソレは物覚えが悪い上に、どうもオメガの本能には逆らえないような、どうしようもない淫乱のヤガキでして…』
「あーオメガさんはみんなそやっていいますよねぇ…、いやぁーご主人も大変や…。苦労してはるんやなぁ……」
今お前こそ――いや、お前だけ――はあきらかに楽しんでいただろうが、この変態クソ親父。絶対殺すからな。
『ええ本当に、すみませんねぇ。…それでお詫びといってはなんですが、今晩はそのバカにとことん奉仕させてやってください。――それこそ一晩中どこそこを舐めてろと言ったら、それくらいのことはできるように躾 けてはありますのでね。…どうぞもう温情など一切かけず、ソレはあくまでも物か、せいぜい奴隷として乱雑に扱ってやってください。』
「…ふっ…そらどうも、えらいおおきに……」
なるほど…――。
「ほんなら今晩は一晩中、全身舐め奉仕でもしてもらおかユンファ…――なあ…?」
俺が怒りをこらえながらそう投げかけると、ユンファさんはうつろな声でこう答える。
「……はい…。ご主人様のご命令ですから…、一晩中、お客様のどこをでも…丁寧に、何時間でも舐めさせていただきます……」
『お客様に失礼のないように、しっかりとご奉仕してこいよユンファ…――帰ったら……忘れるな。』
「…はい、かしこまりました…。それと…帰りはご主人様のおちんぽ様を想いながら、家に着くまでにおまんこをたっぷり、ぐちょぐちょに濡らして…、おちんぽ様をまんこに即ハメしていただけるように…しっかり発情しておきます…――ケグリおじさん…? 僕、楽しみにしていますね……♡」
「チッ…」と俺はわざとケグリに舌打ちを聞かせた。
「…ほなあぁえらいどうもはばかりさんでしたご主人、…ほんまにそろそろ…」
『ええどうも、ぐふふすみませんう ち の が…』
「いぃえぇ…どえらいもんぃやーたくさん聞かしてくれはってねぇ、楽しかったです、ほんまにおおきにえ、…ほな、さいなら…――。」
俺は頭をもたげ、ユンファさんの頭の横にあるスマホ画面の――その通話を切る赤いボタンをタップし、ようやっとケグリとの繋がりを断った。
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