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175 ※微

   ユンファさんは先ほど、俺に焦らしに焦らされた乳首のその両方を強くつままれたために、不意な絶頂を迎えた。  そしてその天にも昇る快楽のフライトを終えてすぐ、彼は後ろから俺に抱きすくめられたままうなだれ、まずは「ごめんなさい…」とせわしい呼気まじりに謝った。  ……それは、ユンファさんはケグリどもに、絶頂の間際にはそれを逐一報告すること、それもどこでどのように絶頂をするか、それを極めてマゾヒスティックに報告し、またかつその絶頂の許可を得られないことには、決して絶頂に達してはならない――というような調教を受けているために、である。  それだから彼は、怯えた調子でこう続けた。 「はぁ、…許可なく、勝手にイッてしまって…本当に…」 「んふ…貴方が謝る必要など、一体どこにあるでしょうか…」としかし俺は、優しいそよ風のような吐息をふくませた声でさえぎった。 「イくもイかないも、その判断の権利は貴方ご自身にしかないのですよ…――いいえ、寧ろ俺は貴方に〝ありがとう〟と言うべきでしょうね…――愛する貴方を、手ずからオーガズムへまで導くことが出来た…、男としてこれほど嬉しく、また自信のつくこともありませんから…、ふふふ……」  そして彼の薔薇(ばら)色の頬にちゅ、と口づけたのち――同じく紅くなったその人の耳に、「それと…イッている時のユンファさんも、大変色っぽくお綺麗でしたよ…」と微笑しながらささやいた。  ……するとユンファさんはぴく、と肩を小さく跳ねさせたが、――俺がふと顎を引いて見たその端整な横顔――うつむいたそのうす赤い美貌にふわ…と、幸福そうなほのかな微笑を(にお)いこぼした。  しかし、彼はその長い黒いまつ毛をはにかみに打ち震わせながら、ぽそぽそとこう言う。 「は、恥ずかしいです、正直…、その、綺麗と言っていただけるのは嬉しいんですが…――いやらしいだとか、みっともない、浅ましい…、そう普段言われている言葉たちよりも…――綺麗だと言われる方が、何故か、よほど……」 「……、…」  まさに月下美人…――これほど純真で、それでいて、これほど艶やかな美人が他にあるだろうか?  この純白の華の魅惑性は大変恐ろしいものである。――あわや人を狂わせるほど、とはケグリらにも見るように――俺もまたそそられてしまってたまらない。 「……はぁ…何て可愛いのだろう、俺のユンファは……、……」  と俺はうっとりとつぶやいたのち、たまらずその赤らんだ頬をべろー…と舐め上げた。なんと甘くつるつるとなめらかなのか…当然今は熱いくらいだが、まるで本物の桃…――「…っ!♡」ユンファさんはビクンッと跳ねた両肩を軽くすくめた。  しかし、俺がそのままぺろぺろと舐めつづけると――俺の、俺の、この美人は俺の、と――「はは…」と目を伏せたまま、照れ臭そうに笑う。 「何だか…大型犬…、ワンちゃんみたい、ですね……」  そのまつ毛の下で火照りを帯びた紫の瞳は『ぺろぺろなんかして…可愛い…、ついわんこ相手のように、よしよししたくなってしまうな…』などと、俺を害のない無邪気な犬だと思いこみ、随分楽観的に愛おしがっている。――まあ俺としては、それはそれで大変嬉しいことだけれど。 「…ん…? ふふ…まあ遠からずでしょう…、アルファは狼ですからね…――さて……」  と俺はここで、ふと見下ろしたユンファさんの胸もと――そのダイヤ型から白皙(はくせき)を覗かせる胸板の、こと目につく粒だった乳頭のその周り――すなわち彼の乳輪を両方、紅いシルクの上からゆっ…くりと円く、また指先でなぞりはじめる。 「…続きは如何(いかが)いたしましょう……? ――俺は正直まだ物足りないのですが、ユンファさんはまだ乳首で気持ちよくなれそう…? ――それとも…、もうここへの愛撫はしつこいでしょうか……」 「ぃ…いいえ…」すると少し怯えた、しかし火照った伏し目のユンファさんは、そう上ずった吐息の声で言うが、 「しつこくは…、ただ僕、乳首…乳首は、もぅ…ッん、♡」  ところがユンファさんはびく、とにわかに腰をこわばらせながら絶句し、ぎゅっと目をつむった。――俺の指先がいたずらに、すり、と粒だった乳頭の先をかすめた、その不意な鋭い快感のために、である。  しかし、俺は「乳首は…?」とその言葉の先を(うなが)しながら、ぷに…と彼の両方の乳頭を、布の上からその形をくずさない力加減でつまむ。――そのまま側面をこするように、ぷにぷにと二本の指の腹で極めてやさしく指圧する。  と……、 「ふっ…♡ ……っ♡ …んん、♡」  ユンファさんはびく、…びくと腰を跳ねさせながらふと薄目を開け――そして斜め下へ伏せたその美貌に、とろめいた表情をうかべたなり、そっとその紅い肉厚な唇をひらく。 「は…♡ ちく、び…♡ 乳首は……♡ ちくび、は……♡」 「…ええ…?」  まあこの様子ならば、ユンファさんに「しつこい」と思われる可能性は低かろう。――絶頂後、人はしばしば直後の愛撫に不快感を覚えることも少なくはないが、彼は少なくとも今はそのようではない。  かえって今も快感を得ているものとは見受けられる。…とはいえ、肉体のそれと彼の意思とはまた別の話だ。肉体が快くとも強いれば無理やり、それは当然の話――と俺は(といって、ぷにぷにと優しく彼の乳頭を刺激しつづけながら)、彼の言葉のつづきを待った。 「……ッ♡ …ち、くびは……僕……♡」  と、そしていよいよユンファさんは――時おりびく、びく、と腰を弾ませながらも――、どこか陶然としたか細い声で、途切れとぎれにこう語を継いだ。 「だめ…なんです…、感じすぎて…しまっ、て…――は…♡ 調教…されてしまった、から…、服で(こす)れるだけで、発情…出来るように…――ぉ…おまんこ、いやらしく…すぐに濡らせる、ように…、抓られたら、すぐに…イけるように…――だから…これ以上は僕…、もう、だめ……ぁ、貴方に、みっともない姿を、見せたくないんです…、ぃ、淫乱な…僕の痴態(ちたい)を…見せたく…ッンぁ、♡♡」  とユンファさんがひと際甘い声をあげながら、ぎゅっと目をつむる。  両方の乳頭を、俺の人差し指の側面がぴんっと、その根もとから強めにはじいたせいである。――なんだ、そういうことならば…と――俺はそのまま、その小粒な突起の先端ばかりをすりすりと優しく、しかし速くこすり始める。  するとユンファさんはビクッ…ビクビク、と間欠的に体をびくつかせながら、 「ぁ、♡ ぁ、ぁ、♡ だめ…ッぁふ、♡ ッく、ふぅぅ…っ♡」と次々甘い苦悶の声をもらすのだ。 「そうですか…。んふふ…しかし、それならばどうぞご心配なく…」  俺はそうユンファさんの耳に優しい低声でささやく。 「俺は先ほどの貴方を見て、確信しています…――貴方の()がり狂うそのお姿は、さながら月下美人が咲き匂う姿それと見紛う艶やかさに違いない…とね……。それに……」 「ぁ、♡ あッらめ、♡ 耳、声ぇ、♡ 一緒、おかしくなっちゃ、♡」――ビクビクビク、そう泣いているように善がるユンファさんは、ふいっと俺から顔を背けた。が…今度はもっと意地悪にも、その耳に唇を押し付け、耳の穴にこの低い静かな声と吐息とを注ぎ込む。 「それに…、んふふっ…狂おしいほど気持ちよくなることを恐れる必要もないのです…――淫楽、それを得ることは絶対的に()いこと…、善いことです…、善いことなのです……」 「ふッ…!♡♡ 〜〜〜ッ♡♡♡」――するとビクビクビク、小刻みに腰を痙攣させているユンファさんは、どうもまた絶頂…それももはや声さえあげられないほどの強い快感を得ているらしいが……、 「ですから、さあ…もっともっとここでたくさん気持ちよくなりましょうね…、愛しい可愛い俺のユンファ…――。」  …――といったわけで俺は、その後も執拗なほどユンファさんの乳首をばかり責めて愉しんだ。  後ろから耳や頬やを舐め、唇で食み、ときどきその唇とキスをしながら…、また焦らし…焦らして…焦らしてから…――シルクという薄い布の上から、その先端をカリカリと爪先で()いたり…――その乳頭を、根もとから指の腹で押し倒すようにぴんぴんとはじいたり…――乳頭ごと、ねっとりと乳首全体を指先で撫でまわしたり…――今度はその乳首を避けずに、ゆっくりと彼の胸板を揉みしだいたり…――ユンファさんは俺のその愛撫に、面白いほど敏感に反応してくれた。――ビクビクと腰や下腹部やを痙攣させ、可愛らしい上ずった声をもらし、…感じすぎたあまり、ほろりと綺麗な涙をこぼしたり…――果てにはまた、絶頂を迎えたり。  しかし――あまり同じところをばかり愛撫しつづけていては、その場所の感度が次第に鈍くなっていってしまう。  ……それでは面白くない。  というわけで俺は、あえてまたこと敏感な乳頭は避けて、その人の胸板をかすめるような十本の指先で撫でまわしたあと…――この両手をするするとなめらかなシルクをまとう彼の胸の下、あばら、硬い平たいお腹…とおもむろに下げてゆき――さらに、深いスリットから覗く太い腰骨にまで到達したならば、するりと自然に、そのスリットの下に隠れたその人の脚のつけ根に中指を沿わせ…――そして、内また気味のために近くなった両の内もものすき間にさし込んだ両手で、するするとその内ももを膝のほうまで撫で上げてのち…――その膝の側面をガバリ、――そうして唐突に、ユンファさんの両脚を大きく開かせた。 「……ッ!」  するとユンファさんは羞恥のあまり、怯えてビクンッと上体を跳ねさせた。――そして彼はそのとき同時に、さっと斜め下へ赤らんだ顔をそむけた。  ……こうしてあられもなく開脚させられればなお目立つ、その今や股ぐらをばかりしか隠さない紅いチャイナドレスの下半部、またその布を天へ向けて押し上げている、自分の勃起した陰茎から――彼は顔を、その目をそむけたのである。  しかし、俺はあえてその雄麗(ゆうれい)な魅惑のものを指摘はしない。  その代わり――俺の両手はゆっくり…じっくりと…、下は彼のぬるりと濡れたやわい熱い大陰唇(だいいんしん)、そして脚のつけ根…長細い内もも、上は骨ばった膝の側面にいたるまで、するり……するり…その手ざわりの極上ななめらかなやわ肌を、じっくりとこの手のひらの触覚で堪能する。 「…何と素晴らしい…、この(そそ)られるなめらかな月白(げっぱく)…、まるで月下美人の純白の花弁(はなびら)…、この輝くような白さも()ることながら…、……」  しっとりとこの手に吸いついてくる、この肌はまるで(ぬく)められた最高級品のシルクサテン…、何と肌理(きめ)のこまやかな…――実際、今彼が着ている実物のそれの手ざわりと比べても何ら遜色ない、いいや、もはやこれはそれ以上…――もっとも()いのはそのなめらかさばかりではない――ざわりと粟立ったこのざらつきも、ふるふると震えている彼の内ももの筋肉が時たまぴく、と跳ねるのも、そのすべてが俺の手に官能的な悦びをもたらすのだけれど。 「これこそは(まさ)玉肌(ぎょっき)という他にありません……」と俺は、羞じらいの伏し目で頬を赤らめ、斜め下へ顎を引いているユンファさんの耳にささやく。 「とてもすべすべ…いつまでも触っていたくなる、このとろけるような肌理の細やかなしっとりとした肌…――全くユンファさんは、お肌まで極上のものをお持ちなのですね……? 正直、唆られてしまいます…、んふふ…それはもう、恐ろしいほどに……」 「……っ♡ ……、…」  するとふいっと、俺の唇からまたユンファさんの耳が逃げる。が――そのとき赤いシルクを押し上げる彼の勃起がピクン、ピクンと官能的な反応を見せたのだ。  そう……勃起(それ)を指摘などせずとも、これだけで羞恥心というスパイスは十分である。――心もとなきたった布一枚、強いられた大開脚、布一枚をへだてても隠すに隠しきれない勃起、およそたっぷりと濡れているのだろう膣口の無防備な開放感、…それにくわえて自分の肌の、すなわち肉体の感触を具体的に褒められながら、敏感な大陰唇から内ももをねっとりと愛撫され、果てには欲情を告白される…、それも焦らされている二つの乳頭を疼かせながら…――また、濡れそぼつところに触れそうで触れない、俺の手指にも焦らされながら…――これは別段マゾヒストではない人にも通用する程度の甘い羞恥、今宵にはもっともふさわしい程度の羞恥(スパイス)である。 「は…、恥ず、かしい…です……」  とユンファさんは羞恥のあまり伏せたまぶたまで紅潮させながら、震えた声で言う。――ましてや彼は日々性奴隷として(けな)されはしても、ここまで丁寧に褒められはしない。…先ほども綺麗と言われるほうがよほど…とは本人も口にしていたことだが、俺の賛美もまた事実恥ずかしい気分にさせられるのだろう。…それがまたたまらないのだけれど。  しかし――彼は真っ赤なその顔に、すぐふと困ったような微笑をたたえた。 「でも…あ、あの…、興奮、していただけて…――その…う、うれ、嬉しいです…、あの、ただ僕…排卵日が、近いので…それで、その…肌が、いつもより、綺麗なだけ…なんでしょうけど……」  決してそればかりの話ではないのだが――たしかにオメガ属が月に一度迎えるそのオメガ排卵期には、新陳代謝を高める作用があるために、肌をしっとりとなめらかにする効果もあるのだという。  ……それにしても、――申し訳ない、俺としても不本意ではあるのだが、――愛する初恋の美男子の口から「排卵日が近い」だなどと言われてしまっては、…それもつがいにしたくてたまらないオメガの彼にそれを言われてしまっては、…アルファの本能からしてどうしても、俺は興奮してきてしまうのだ。  それは子孫を残そうという生物的な本能もあれど、このオメガをつがい(我が物)にせねば、という獣的な本能からも――。 「……、…、…」  とはいえ、…我慢。  ここでその本能に従ってしまえば、俺はユンファさんをどうしてしまうことか、…  ……しかし、自分の魅惑性をそれと知らない月下美人は、 「…よかったです、今日お会い出来て…」と、ほっとしたように――嬉しそうに――その伏せがちな切れ長の目を細める。 「その…正直いつもゆるいと、怒られてしまうんですけど…――実はあの…排卵日前は、なかも…いつもよりは、気持ちいいそうで…――あ、あのだから、…もしかしたら貴方を、少しでも…気持ちよく、出来るかもしれません…、今日だから、こそ……」 「そういうことを仰言ると、俺に乱暴にそのお体を奪われてしまうかもしれませんよ…」  俺は頭がクラクラとするなかでも、かろうじてそう(いさ)めた。  しかしユンファさんははにかみ笑顔のまま、こく、とうなずいた。 「嬉しいです、それでも…、貴方なら……」 「……貴方って、本当に危ない人…。……」  しかし、かえって俺は、彼のその笑顔に理性の手綱を握り直せたのだった。  ――つがいとなるオメガへいだく並外れた愛おしさ、それを根源とした過保護なまでの庇護の本能――それもまた、アルファの本能だからである。

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