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第11話 いつまでも

 それから数日経つと、気候は安定し国中に笑顔と活気が戻った。 「オルビス、ありがとう」  セオドアの瞳は穏やかでどこまでも広がる大空のようだ。  オルビスは、ぐっと背伸びをするとセオドアの唇に口づけた。  穏やかで温かな空気。  二人は視線を合わせると、どちらからともなく優しく抱き合った。互いの温もりを味わうように。  後日――。  二人の姿は王城の中庭にあった。  空は青く澄み渡り、心地よい風が吹いている。  以前のように、庭師は忙しそうに働いていたが、その表情は明るく活き活きとしていた。  中庭は緑に覆われ、小さな蕾もたくさんついていた。  きっとこれから、色鮮やかな花々が咲き乱れるだろう。   「オルビス、髪を切ったのだな」 「ええ。短い方が慣れているので」  龍化したことの影響で長く伸びた髪をオルビスはバッサリと切った。  同時に増えた青みがかった色はそのままだ。色も元に戻そうかと思ったが、染めるのも面倒でそのままにしておいた。   「長い方がよかったですか?」 「いいや。どちらも似合っているよ。とても綺麗だ」 「ふふ、褒めても何も出ませんよ?」 「そうか。キスの一つでももらえるかと思ったのだが残念だ」  悪戯に笑うセオドアは少年のようだった。  いつまでも、ありのままのセオドアでいられるように、この笑顔を守れるように。  いかなる時も支えていきたい。  オルビスは、改めて自身の心に誓いを立てた。 「セオドア、僕とずっと一緒にいてくれますか?」 「ああ、もちろん」  見つめ合った瞳が自然と近づいていく。  さらりと吹いた優しい風は、二人を包み込み通り抜けていった。    数か月後。龍神の顕現を後世に受け継ごうと「龍神の奇跡」という歴史物語が執筆された。  その挿絵には、晴れ渡る青空を悠々と泳ぐ龍神の姿、キラキラと美しい宝石のように輝く雨が描かれたのだった。 本編 完(番外編につづく)

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