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第44話 青写真

 同時刻、音楽室  氷潟夕真(ひがた ゆうま)が入室すると、ピアノの椅子にちょこんと座った刀子朱利(かたなご しゅり)が、拍子抜けをさせるように手を挙げた。 「は~い、夕真」 「朱利、こんな時間にこんなところに呼び出したりして、いったい何の用だ?」  彼女は手を組みながらニヤニヤした。 「あんたの考えてること、当ててあげようか? ウツロと戦いたくてうずうずする、そうでしょう?」 「……!」  心を見透かされる意趣返しに、彼はドキッとした。 「一見めそめそしてるくせに実は強いやつ、そんなやつをひねりつぶしてやりたい。はっ、あんた、昔からそういうとこあるじゃん?」 「やつらはいま、固まって動いている。俺たちや万城目日和を警戒してるんだろう。もう一度真田をさらうのは難しいな……」  氷潟夕真は少し間を置いてから答えた。  その内容は刀子朱利の考えを読んだものだった。 「あはっ、理解が早いよね、さすが」  彼女はケラケラと笑った。 「何が言いたいんだ、朱利?」 「難しくないってことだよ、つまりね。これ、見て。ほんの30分前まで、ここでおこなわれてたこと」 「……」  刀子朱利は携帯の端末を氷潟夕真にかざした。  そこには絡み合う二人の少女の映像が。  特徴は銀色のメタルフレームの眼鏡(めがね)、そして黄色いカチューシャ。 「さ、真田さんにはまたつきあってもらいましょ? きゃはっ、きゃははっ!」  音楽室の中に甲高(かんだか)い笑い声が響きわたった――

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