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唯一動かせる目で辛うじて見えたのは、見たことがない落書きのような文字らしい文字。
その光る文字はミコを囲うように石の床に描かれているようだった。
何一つ分からない今の状況をさらに混乱に招いたのは、一糸纏わぬ姿にされていたことだ。
眠る前、当たり前に服を着ていたはず。普段だって寝てる間に寝ぼけて脱いだりしたことがない。
だから、故意に脱がされたことになる。
でも、どうして。何のために?
全裸で羞恥を覚えるよりも、こんなわけの分からない状況を抜け出したくて、身じろぎしていた。
微塵も動けやしないのにそれでもだ。
必死になってそちらに意識を向けていたせいか、頭上から頬に触れる手にすぐに気づけなかった。
背中に伝わる石のようにひんやりとした手に、「ひゃいっ」と変な声を上げた。
『起きてしまったのか』
掠れているような重々しい声がかかる。
その男女とも取れる声に身を竦ませたのは、先ほどとは違う声に感情が乗ってないからか。
怖い。
何か怒らせるようなことをしてしまっただろうか。
『おこってる?』
『怒る? 何故、そう思う』
『ただ、なんとなく⋯⋯』
『キミにそう思わせてしまう態度を取ってしまったようだ。隠しきれぬ感情の裏返しとでも思って欲しい』
隠しきれぬ感情の裏返し?
言葉の意味が何一つ分からない。
間抜け面をしていたからなのか、ふっと口元を綻ばせた。
『見れば分かる』
何を、という言葉を遮るように頬に触れていた手が胸、臍へと下がっていく。
目で追っていたその手が足の間の急所で止まった。
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