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5.
なんで手を止めたのだろうと思った時。
ローブの人がぶつぶつと何かを言っていた。
真上であっても聞き取れない口から溢れる言葉らしいものに、「なに、してるの?」と緊張した声音で訊ねようとした、その時。
かざした手の平から、どこからか光の粒が集まり、それが丸く形作られ、それが雫のように落ちたその瞬間。
そこを中心に電流のような痛みが身体中に走った。
声にならない叫びが部屋中に響き渡る。
その痛みに耐えきれなくて、幼いミコは意識を失った。
その際、こんな言葉が聞こえたような気がした。
『我がものとなった証を付けておいた。成り合った暁には迎えに行く』
その後、再び目を覚ました時は家の前だった。
すぐさま自分の身なりを見ると、眠る前の格好だった。
だから、裸にされて気絶するぐらいの痛いことをされたり、そもそも森に迷ったことも夢の中の出来事なのだろうとその時は思っていた。
だが、家から酷く疲れきった両親が出てきて目が合った時、信じられないといった目で思いっきり抱きしめられた。
なんでも一週間も行方をくらましていて、このままミコが帰ってこないと不安な毎日を過ごしていたのだという。
一晩だと思っていた出来事はそうではないと否定されたミコをさらに追い討ちをかけたのは、下腹部の違和感だった。
意識を失う前、あの黒いローブの人が何かを言っていた。
その証拠が小さな陰部の根元に付けられていた。
そのことで、夢だと自分に言い聞かせても現実だと嫌でも突きつけられた。
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