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12.
キスはおろか、好きな子もいなかったミコは好きでもない同性の相手に初めてを奪われるとは思わなく、ショックで抵抗もせず固まっていた。
そんなことを露知らず、フリグスはキスで大人しくなったと思い、噛みつくような貪るようなキスをしながら、自らの手で暴いたミコの健康的な肌を、そこでも雑に触れた。
その蛇がまとわりついているような気持ち悪さを覚えていた時、フリグスが疑問に思うような顔をした。
『⋯⋯お前、こんなところに妙なものを付けているのか』
彼の目線が下を向き、指先でリングの部分を摘んでいた。
そこで言いたいことが分かってしまった。
触れられたくない魔道具のことを言っている。
『純粋そうな顔をして、とんだ趣味を持っているんだな』
『⋯⋯っ、ち、違うよ、これは⋯⋯』
『これは?』
聞き返され、しかし圧を感じる声音に言葉が突っかえってしまった。
早く反論しないと。でも、言いづらい。
しどろもどろとしているとフリグスが深くため息を吐いた。「興醒めだ」という言葉と共にミコから離れていく。
言わなきゃ言わないと。
興味無さそうな相手にこんなことを言っても無意味な話だけど、その時のミコはその気持ちが大きかった。
『ぼくの趣味じゃない!』
『⋯⋯は?』
言いたい気持ちが声に変わった。
自分でも驚くぐらいの声に、振り返った彼は怪訝な顔をした。
『お前の趣味じゃなかったら、なんだ』
『これは、その⋯⋯』
一応返答した彼に、あの日の思い出せる限りの話を、たどたどしくも話した。
やっとの思いで話し終えたミコは、あまりにもの緊張で吐き気を覚えながらも彼の反応を窺った。
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