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生まれ育ったラント村では、羊の毛がとても良さげだとか、牛の乳がいい具合だとか、馬の毛並みが良くて、献上するのにはちょうど良いという話が当たり前だったミコにとっては、この学園内のいわば猥談がおかしい、はっきり言っておかしすぎるのだ。
ミコからすれば非常識な話で、学園に入ってからしばらく経つが、この状況に慣れようがなかった。
リエヴルの話が本当ならば、ベンゲルもまさかのフリグスもそういう類のものが好きだと言うことなのか。
ベンゲルなんて口では罵っておいて実は、なんて。ありえない。
「あと二年もあるから、この当たり前な状況に慣れていくでしょ」
「慣れたくはないんだけど」
「ミコとえっちな話ができる日が楽しみだなぁ〜」
るんるんと口で言いながら、一人先に教室に入って行った。
「そんな日が来ることはないよ⋯⋯」と呟いたミコはとぼとぼとその後に続いた。
今日の調合の授業は、それぞれのペア一組が一緒であることが前提の、四人で班となって、先生が出した課題の材料を採取しに行き、集めた材料を魔法で唱えて薬を作るというものだった。
ミコとフリグスのペアは、リエヴルとベンゲルのペアと一緒になった。
「ミコと一緒になったね、嬉しい!」
先生から告げられ、普段教室で使っている机四個分の四角い特殊な机──調合台の席に着いた時、リエヴルは手を取り合って喜んでいた。
ミコは主にリエヴルぐらいしか親しい友人がいない。
だから、なんだかんだ言ってもリエヴルと同じ班になれて嬉しかった。
ネコ側の自分達は問題ない。
問題はミコ達それぞれの相手だ。
「ルーグロリア家の方と同じ班になれて、光栄ですねぇ」
「どこの誰だが知らないが、そんな嫌味通用しないぞ」
「⋯⋯っ、別に嫌味だなんて⋯⋯」
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