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背中に伝わる冷たい感触。 指一本も動けないミコに口元しか見えない"人"が、何かをぶつぶつ言っている。 『や、やだ⋯⋯っ!』 『うわっ』 敏感な部分に器具のひんやりとした感触が伝わった時、恐怖がせり上がり、触られたくないと膝を曲げた。 『アラタス君ー? それだと患部に治癒を施せないでしょー』 『こわいこわいこわい⋯⋯』 『ミコ、大丈夫?』 呆れているような咎めるような口調の先生や、心配する友人の声はがたがた震わすミコの耳には聞こえなかった。 何がしたいの。ぼくが何かしたっていうの。ぼくはあの時初めて森に迷い込んでしまったはずだけど、どこかで会ったことがあるの。 『⋯⋯うーん、このままじゃ埒が明かないなぁ』 『押さえつけておきます? それとも縛るとか?』 『それらよりも手っ取り早いことをしようか。──あくびひとつ、あくびふたつ。ほら、まどろみ、お眠りなさい』 子守歌のようにゆっくりとした口調で紡いだ呪文を唱えた後。 ミコは眠りについていたようだった。 次の記憶は、「終わったよ」と声を掛けられた場面だった。 「──ミコがあまりにも暴れるから、先生手を焼いてたじゃん」 「だって⋯⋯怖いんだもん⋯⋯」 「怖いのは仕方ないけど、でも、痒みが治まって良かったね」 「痒みは治まったけど、今度は痛むかな⋯⋯」 こうしている間もジンジンと痛む。 あの器具を挿入()れられた影響だけど、少ししたらこの痛みも治まると言っていた。 この痛みも、掻きむしったところも含めて今すぐ治まって欲しい。 「そういえば、ミコ。そのマントどうするの?」 「あ、どうしよう」 膝上に丁寧に畳んだマントに視線を落とす。

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