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43.
背中に伝わる冷たい感触。
指一本も動けないミコに口元しか見えない"人"が、何かをぶつぶつ言っている。
『や、やだ⋯⋯っ!』
『うわっ』
敏感な部分に器具のひんやりとした感触が伝わった時、恐怖がせり上がり、触られたくないと膝を曲げた。
『アラタス君ー? それだと患部に治癒を施せないでしょー』
『こわいこわいこわい⋯⋯』
『ミコ、大丈夫?』
呆れているような咎めるような口調の先生や、心配する友人の声はがたがた震わすミコの耳には聞こえなかった。
何がしたいの。ぼくが何かしたっていうの。ぼくはあの時初めて森に迷い込んでしまったはずだけど、どこかで会ったことがあるの。
『⋯⋯うーん、このままじゃ埒が明かないなぁ』
『押さえつけておきます? それとも縛るとか?』
『それらよりも手っ取り早いことをしようか。──あくびひとつ、あくびふたつ。ほら、まどろみ、お眠りなさい』
子守歌のようにゆっくりとした口調で紡いだ呪文を唱えた後。
ミコは眠りについていたようだった。
次の記憶は、「終わったよ」と声を掛けられた場面だった。
「──ミコがあまりにも暴れるから、先生手を焼いてたじゃん」
「だって⋯⋯怖いんだもん⋯⋯」
「怖いのは仕方ないけど、でも、痒みが治まって良かったね」
「痒みは治まったけど、今度は痛むかな⋯⋯」
こうしている間もジンジンと痛む。
あの器具を挿入 れられた影響だけど、少ししたらこの痛みも治まると言っていた。
この痛みも、掻きむしったところも含めて今すぐ治まって欲しい。
「そういえば、ミコ。そのマントどうするの?」
「あ、どうしよう」
膝上に丁寧に畳んだマントに視線を落とす。
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