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44.
保健室から戻った時には調合の授業が終わっていたどころか、昼休憩になっていた。
ミコ達の姿を見かけた時、ベンゲルが「お前らの代わりに材料探しをして、薬を作り上げたんだからな。感謝しろよな」と言うのを、「あーはいはいそうですかー。そりゃあどうも」と顔を斜めにして、まるで見下ろしているような角度で言い返すリエヴルを尻目に、自分の席で静かに読書をしているフリグスに話しかけた。
『あの、マントありがとう。返すね』
『いい、いらない』
『え、でも、返さないってわけには⋯⋯』
『それはもう、オレには必要ない』
ミコのことは目もくれず、変わらず冷たく突き放す言い方にこれ以上何も言えなかった。
いらない、と言っていたが、フリグスは羽織っていなかったわけだからいらないはずがないのに。
「フリグスがいらないって言ってたんだしいいんじゃない? 魔法の実験材料にしようよ!」
「実験材料⋯⋯? 何するつもり?」
「魔法にどれだけ耐性あるのか、燃やしたり濡らしたり、夜のお供にしたり!」
「⋯⋯最後のはマント関係あるの?」
実験と称した日頃の鬱憤でも晴らすつもりらしいリエヴルの名案だと言わんばかりの列挙に、ただ呆れていた。
「いくらなんでも人様のマントにそんなことできないよ。それに、こんな高そうな物恐れ多くて、手元に置いておきたくないから、きちんと返したいよ」
「律儀だねぇ。平民が使ったマントなんてもう使いたくからいらないって言ったんじゃない?」
「その理屈だったら、最初からぼくにマントを貸さなければいい話だし、ベンゲルのせいで偏屈になってない?」
「マント程度だったら、いくらでも買い直せると思っているじゃん? あ、そうだ! 本人がいらないって言ってるんだし、そのマント、ボクにちょうだいよ。それをベンゲルに見せつけて、お怒りセックスしてもらおうかな」
「これはきちんとフリグスに返します!」
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