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いいことを思いついたと声を弾ませるリエヴルから遠ざけた。 「冗談だって」 「リエヴルの言うことは1ミリも冗談じゃないじゃん」 もう、と頬を膨らませた。 返すとは言ったものの、それとなく汚れているような気がした。 そう思った時、不意にあることを思いついたミコは椅子から立ち上がり、部屋から出た。 「ミコ、どこに行くの?」と問いかけるリエヴルに「ちょっと、ね」と曖昧に返事をしたミコは、外へと通じる扉を開け、その近くの壁に立てかけていた桶を手に取り、その中にマントを入れ、それを持って水汲み場へと向かった。 基本授業以外で魔法を使ってはならないという規則があるため、当然水の魔法が使えない。 魔法の特訓にもなるし、便利だから使いたいと文句を言う生徒を耳にしたことがあるが、どちらにせよまともに魔法が使えないミコにとっては、都合が良かった。 それに村にいた頃は、流れる川の水を汲んだり、その水で洗い物をしたものだから、手慣れたものであり、懐かしくも感じてしまう。 蛇口側に桶を置き、手押しポンプのハンドル部分を両手で持ち、上下に大きく動かした。 何度かその動きをしているうちに水が勢いよく出てきた。 「ミコ、洗って返すつもりなの?」 「ぼくが洗うこと自体も気に入らないだろうし、このことをやるのも自己満でしかないけど、それでも誠意を見せたいんだ」 「ミコ⋯⋯」 感動しているようで、その声は震えていた。 「ミコなりの愛だね!」 「違うからね?」 「またまた〜」 「だから違うって」 「好きなんだね〜」と言うリエヴルに「好きになんてなってないし」とその勘違いでからかってくる友人の怒りをマントにもぶつけてしまっていた。 「そんなにもゴシゴシしたら、マント痛まない?」 「リエヴルが邪魔しなければもっと優しく洗っているんだけど」 「ボク、洗う邪魔したっけ?」 「リエヴルの杖、折るよ」 「分かったって! ごめんごめん」

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