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唇を震わす。 ここで泣いてもしょうがない。起きてしまったことを嘆いていても無意味なことだ。けれども、泣きたい気持ちでいっぱいだった。 「と、とりあえず、また洗ってみようよ」 「⋯⋯うんっ」 その事に気づいたのであろうリエヴルが動揺しながらも、そう勧めてきた。 涙を拭いて、強く頷いたミコはマントを抱えて、一足先に走っていったリエヴルが持ってきてくれた桶に入れ、水汲み場でその桶に水を入れた。 水に浸されたマントに付着したフンが少しずつ剥がれ、水中に浮いていた。 「どう? 落ちた?」 「う、うん⋯⋯それとなく⋯⋯」 マントを揺すってみると、ほとんどの汚れが剥がれ落ちていっていた。 一旦引き上げ、広げてみるとさっきよりは面積は小さくなったものの、完璧とはいえなかった。 「洗剤で洗うしかないかな⋯⋯」 「この際、物は試しだよ」 「取ってくる!」と返事をする前に足早と取りに行ってくれたリエヴルがすぐに洗剤を手に戻ってきた。 「はい」 「ありがとう」 差し出された洗剤を滑り落とさないよう、慎重に受け取る。 というのも、洗剤が丸い形をした固形型だからだ。 表面は洗剤の特性上、ぬるぬるとして滑りやすいため、持ちにくさがあった。 そのせいで今までに何度落としたか。 今回は落としても、拾う時間も惜しいし、一刻も早くこの汚れを落としてしまいたい。 落とさないようにと、心の中で祈りつつ、それを汚れている箇所に擦り付けた。 泡立ったところで洗剤を一旦置き、マントを擦り合わせた。 瞬く間に泡まみれとなり、これで充分だろうというタイミングで水に浸し、洗い流した。 「どんな感じ?」 ひょいとリエヴルが覗き込む。 緊張した面持ちでマントを広げてみる。 汚れた箇所はほぼ見えないぐらいに綺麗になった。

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