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50.
干すのにちょうどいい縄を何故か持っていたリエヴルから借り、それを部屋の端から端に渡して、そこに充分に絞ったマントを干した。
寝る前、それを見上げたミコはどうか綺麗になってますようにと心の中で祈り、眠りについた。
「⋯⋯これ、どう思う?」
「うーん、百歩譲って大丈夫⋯⋯と思うけど」
朝起きて、真っ先にマントの様子を見た。
乾ききってないマントには、ほぼ綺麗になったと思われた汚された箇所が、全て汚れを取れてなかったと分かってしまうぐらいの鳥のフンがカピカピとなっていった。
昨日のうちは綺麗になったと思っていたのに、やっぱりダメだった。
落胆し、諦めた気持ちでいると、リエヴルが眠たい目を擦りながらそばに寄ってきたのを機にそう訊ねたのだ。
「百歩譲って、か⋯⋯」
「もうこの際、諦めるしかないじゃん? 元々いらないって言ってたんだし、なかったことにしようよ。きっと気にしてないと思うし、新しいの羽織ってたじゃん」
リエヴルが言うように、次の日には新調したマントを羽織っていた。
その時点でもういいかなと諦め寄りであったが、元々フリグスの物であるから、返さなくてはと己を言い聞かせていたのだが、それがこんな有り様だ。
やはり、諦めるしかないのだろうか。
「⋯⋯はぁー⋯⋯。ミコって意外と諦めが悪いよね。っていうか頑固」
「え、何急に⋯⋯」
「ミコの気が収まらないのなら、一言言ってきたらどう? そういうのも誠意って言わない?」
呆れたと付き合ってやれないと言わんばかりにため息を吐いたリエヴルがそう言ってくる。
いつまでもグズグズするのも良くないと自覚はしているが、それでは自分自身がスッキリしないのだ。
だから、リエヴルが言うように素直に謝罪すればいいんだと。
「うん、ぼく謝ってくる」
「ミコはさほど悪くないんだから、逆に謝らせてたら?」
「ぼくも悪いから謝らせるなんて⋯⋯」
そう言っている時、朝食の時間を告げる鐘が鳴り、同時にどちらとも分からないお腹が鳴った。
「お腹は正直だよね」
「ぼくは少し肩の荷が下りたっていうか」
「そこまで責任を負うことはないって。さっさと着替えて行こ」
「うん」
今は食事することに専念しようと身支度を整え、友人と共に食堂へと向かった。
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