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謝る、とは言っても意外と難しいものだ。
教室に行って、すぐにフリグスの席に赴いたものの、肝心の本人がいなかったり、授業の合間の短い休み時間に行こうとしたが、大概はミコの勉強のことに関して、先生自ら教えに来てくれたり、恒例の補習のことでちょっとした説教を食らったりして、話す機会もなかった。
けれども、 授業でペアになる機会もある。
そこで「話したいことがあるのだけど」と話を切り出すことはできた。
「話したいことだと? それは授業に関係あるのか」
「授業には関係ないことだけど⋯⋯。フリグスにも関係あることだから話を聞いて欲しいんだけど」
「オレに? また補習のことか。魔力を注ぐ以外でわざわざ話をすることがあるか?」
「補習のことじゃなくて、謝りたいことだから」
「お前はいるだけでやらかしている。今さら謝ることでもないだろう」
「それはそうなんだけど⋯⋯」
フリグスは授業中に私語をすることも減点対象だと思っているようで、話は終わりだと言わんばかりに一番の話題にまでいかずに切り上げられてしまった。
実際に私語を注意されたら減点対象だ。でも、なかなか話す機会がなかったため、この時がチャンスだと思ったのだ。
しかし、そのチャンスさえも逃してしまった。
どうしよう、どんな時にこの謝罪を口にすれば⋯⋯。
しゅん、と小さくなっていた。
「⋯⋯どうせ放課後も補習だろ。その時にその謝罪なんだか知らないが聞いてやる」
「⋯⋯え?」
一拍の間の後、フリグスがそう言った気がした。
授業中であるから、声を控えめに何よりフリグスから何かを言ってくるとは思わなく、ミコの耳には全てを聞き取れなかった。
「⋯⋯え、何? 補習が何?」
「補習は聞き取れたんだろ。この話は終わりだ」
聞き返そうと思ったものの、話を聞いてくれるような雰囲気ではない。
何が言いたかったのだろうとミコは、放課後の補習までそわそわと落ち着かないでいた。
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