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52.
今日の補習は、火の魔法で50m先にある的を燃やすというものだ。
呪文は間違ってないはずだが、発動できたと思った火の玉が的からだいぶ前に勢いがなくなり、地面に虚しく落ちてしまうのだ。
何がいけないのか、自分にはさっぱり分からずじまいで合格範囲外であるために、こうして放課後に補習という形で行っていた。
「今日はこの補習だったのか」
「うん⋯⋯。何故か火の玉が的まで届かなくて」
「とりあえず唱えてみろ」
「うん」
懐から取り出していた杖の先を的の方に向け、小さく一呼吸入れた後、唱えた。
「小さく揺らめく灯火 よ、火先 となり、飛び散れ!」
杖の先からメラメラと熱い炎がたちまちに火の球となり、反動するほどに勢いよく放たれた。
調子がいいかも、と思ったのはほんのわずかな間のことで、火球は急に勢いを失くし、ぷすっと小さな煙を立てていた。
「最初の勢いは良かったな」
「だよね!?」
「だが、届かなければ無意味だ」
「⋯⋯だよね⋯⋯」
はぁ⋯⋯と深いため息と共に肩を落とした。
「毎日あれほど魔力を注いでやっているのに、この程度の魔法も使えないとは。ある意味一種の才能だな」
「そんな才能いらない⋯⋯」
「落ち込んでいる暇はないぞ。さっさと合格して切り上げるぞ」
「だから、どうやって⋯⋯」
「まず、お前は努力が足りない」
「うっ」
「そして、自信がない」
「うぅっ」
「それから、痛いからと言い訳してそれ以外の方法があることを自ら模索をしようとしない」
「⋯⋯あるの?」
「言ったそばから。自ら模索しようとしないな」
呆れたと冷たい眼差しを向けるフリグスに、心が砕けそうになった。
補習に合格したい気持ちがなくなっていき、このまま寮に帰りたい気持ちが大きくなってくる。
こう思うのも、努力をしない、現実から目を背けていることなのか。
自分では頑張っているつもりなのに。
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