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54.
半ば苛立っている様子のベンゲルが取り出した杖をリエヴルに見せつけ、今にもしようとしているのを、「ほら、合格したんだからさっさと帰りなさい」と先生に咎められていた。
同じ程度のリエヴルが先に合格してしまった。
「これでイメージが湧いただろ」
「うん⋯⋯まぁ⋯⋯」
「なんだ、友達が先に合格して不満か?」
「不満ってわけじゃ⋯⋯」
「あの程度で自信を失くしている場合ではないだろう。仲良しごっこしているよりも、今自分をやるべきことに集中しろ」
ほら、と無理やり前に向かされる。
そんな言い方をしなくても。
今すぐにでもこの杖を放り投げて、逃げ出したい気持ちになった。
けれども、それはそれでフリグスの反感を買うことになる。
集中しないと。
背後から、「ミコ、頑張れー!」という声援を受けながらも、目を閉じた。
リエヴルの杖からは、手を離してしまいそうなぐらいに熱そうな火の球が一直線に的へと向かっていた。
その辺りは自分とよく似ている。
しかし、それが的へ届かないのは何故なのだろう。
元々魔力も持たず、リエヴルの努力というと性的なことばかりで、勉強面の努力をしているのを見たことがない。
それなのに、どうしてあのようなことができたの。
──すごいものを見させたんだから、ありがたく思ってよね
先程のリエヴルの会話が頭によぎった。
リエヴルは貴族のことを毛嫌いしていて、それこそペアであるベンゲルと見ない日がないぐらいに目が合えば喧嘩をしていた。
ミコはそこではっとした。
誰かに見せつけたいから、実力を発揮できる?
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