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「本当にどうでもいいの?」 「だから、新しいのを羽織っているのが見えないか? お前の目は節穴か?」 「節穴⋯⋯」 「お前、この〜っ! ミコのことを侮辱して! ミコ! もう気が済んだでしょ! もう帰ろ──」 「強いていうなら、お前が羽織っていた方がいいと判断したからだ」 「⋯⋯え?」 リエヴルのことなんて聞いてないように紡がれた言葉に、目を丸くした。 一体、どういうことだろう。 「ぼくが羽織っていた方がいいって? それってどういう⋯⋯」 「時間はあるか」 「え、あ、うん」 「なら、来い」 どこに、と訊く前に踵を返してさっさ行ってしまうフリグスのことを慌てて追いかける。 「ミコー! 何も行かなくてもー!」と後ろで騒ぐリエヴルに、「リエヴルは先に帰ってて!」と肩越しに振り返るのを早々に、今にも見失いそうな彼の姿を追った。 「中に入れ」と促されたのは、フリグスの寮の部屋だった。 連れて行かれた先がまさかの場所で、けれども、どうしてそのような場所に連れて行かれたのかやはり分からず、混乱し、部屋の出入り口前でどうしようと立ち止まっていると、「さっさと入れ」と不機嫌に言われたものだから、反射的に入った。 広いな、というのが第一印象だった。 というのも、ミコ達の部屋よりも見晴らしがいいと思ったからだ。 それに、入ってすぐにゆったりと座れそうなソファにローテーブルが置かれており、ミコ達の部屋にはあるそれぞれのベッドが見当たらないことから、一人部屋であるらしいことが分かったが、それにしても、彼のベッドはどこにあるのだろうと見渡そうとした。 「そこに座れ」 そう言って促されたソファは、華やかな柄に金色の装飾が縁取られているという、いかにも高そうな調度品で、マントと同じく大変恐れ多く、座ることにものすごく躊躇いながらも浅めに座った。 テーブルを挟んで向かい側にフリグスは座った。

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