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途中参加した授業は、地理だった。 「──まず、この国はフィオリジア・レグヌムと言ってね。五つある国の中で最も栄えていて、かつ、都市部には魔法使いが多くいるんだ。王宮には魔法使いの中でも最も優秀な者が在籍し、私達の生活をより豊かにするために日々励んでいるんだよ」 初老の男性は、それなり細かく書いた地図を元に、片手には教科書を持ち、もう片方には指さし棒を持って説明していた。 「都市部には魔法使いがたくさんいるけれども、ここから遠ければ遠いほど少なくなっていき、珍しいと呼ばれるほどになっていくんだ。魔法持たぬ者は前時代的な生活をしていてね。魔法使いが魔法でできることを手間暇かけてやっているんだ」 棒人間に似た人型に帽子とマント、それから手には棒──きっと杖だろう──を描いた魔法使いと、簡単な服を着た人間を描いて、位置関係を説明する。 「魔法を持たぬ者を前時代的だと言ったけど、彼らにとってはそれが当たり前の生活だということも頭に入れておいて欲しい」 生徒を、特に産まれながらにして魔法を持つ者を見ていた。 「魔法使いが杖で簡単に自身の欲しいものを手にするのに対し、持たぬ人達は自分達の手で時間をかけてものを作り上げていく。そのことがあって手先が器用なわけだけど、その甲斐あって王宮に献上している場所があるんだ。それはどこだと思う? ゲファール君」 「は、はぁ?」 ぼけ〜っと、黒板を見ていた様子のベンゲルが素っ頓狂な声を上げる。 その間の抜けた声を出したものだから、周りはくすくすと笑っていた。 リエヴルにいたっては、周りの誰よりも声を上げて笑っていたのだ。 ここぞとばかりにいつもの復讐だと言いたげに笑う友人に、ミコは大丈夫かなという心配な気持ちで様子を窺っていた。

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