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「静粛に。じゃあ、ゲファール君が答えられなかったら、次はアネルヴ君に答えてもらおうかな」 「え、なんでぇ?」 裏返った声を上げる。 案の定、ミコが思った心配事が的中し、どうしようという顔をするリエヴルに同級生達は続けて笑っていた。 「さて、ゲファール君。王宮に献上している場所はどこだと思う?」 「あ⋯⋯え、と⋯⋯」 目を泳がせる。 もしくは、どこかに答えないかと探している様子だった。 「王都育ちだと、なかなかその外の世界に触れる機会がないから周りにどんな場所があるか分からないかな」 「は、はい⋯⋯」 「じゃあ、話をずらそうか。そもそも何故、都市部から離れれば離れるほど魔法を使える者が少なくなったか、覚えているかな?」 「え⋯⋯っ、えー⋯⋯魔法を持たない人間による魔法使い狩りをされた、から⋯⋯」 「そう。自分よりも優れ、摩訶不思議なものを自ら作り出せる力は羨みと同時に、嫉妬というものになってしまうんだ。一部の魔法使いが悪影響を及ぼした可能性があるかもしれないけど」 全体を見渡していた目が、そのうちベンゲルに向けられる。 ベンゲルは言葉が詰まったような顔をした。 「我らの始祖は人間でありながら、今では魔法と呼ばれるものを作り出した偉大な方であるのに、先生は嘆かわしいよ」 「あの先生。ある魔法使いと人間から始まったと聞きましたが⋯⋯」 「伝説に近い話だから、その説で思い馳せるのも面白いよね」 「なるほど⋯⋯」 訊いた生徒は曖昧な返事をした。

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