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それで、と先生は話を続けた。
「魔法を持つ者の中でも、優秀な者しか入れない王宮に魔法を持たずとも自ら作り出し、王に認められている所はどこか分かったかな?」
「あ、あー⋯⋯えぇ⋯⋯メリディ⋯⋯?」
「アウスよりも暑くて、すっぱめの柑橘類が採れるところかー。残念、違うかな」
流れるように座ってと言われ、その呆気ない言い方に一瞬拍子抜けしたベンゲルは、ようやく座れたのもあって、文句言いたげな顔をしていた。
脱線した話は意味のある話なのか、地理と関係あるような話ではなかったのではないのか、間違えてでも何でもいいからさっさと答えて座れば良かった、とそのようなことを言いたげにしているようなそんな気がした。
「次にアネルヴ君。どこかな?」
「はい! オリエンスです!」
「海辺の漁師町ね。あそこの魚は美味しいよね」
「はい! 採れた魚は王都にも卸していて、一番自慢のところなんです!あと、自慢できるのはえっちな──」
「アネルヴ君、故郷を語るのはいいのだけど、そこでもないんだよ」
それ以上語らせるのは良くないと判断した先生はまだ話したそうに、「献上よりもイイところなんですよ!」と言うリエヴルに、「あとで話を聞いてあげるから、今は座ろうね」と宥められて、不服そうにしながらも渋々と座った。
「なかなか難しいかな。次で答えられなかったら、答えを言おうか」
さて、次は誰に答えてもらおうかなーとぐるりと見渡した。
肩をビクッと上げた。
まだ誰かを指すつもりなのか、今度こそは自分かもしれないと教科書にかじりついて、答えを見つけようとした。
「じゃあ、窓の外を見ている余裕があるルーグロ──⋯⋯」
「ラント村」
バッと顔を上げる。
その名前は。
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