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鬼気迫るような顔をして言うものだから、半ば正気に戻ったミコは引き気味だった。
けれども、こんなにも夢中になっているから魔法みたいなものをかけられているのかもしれない。
リエヴルはそういう話にはすぐに食いつくよね、と苦笑混じりで返していた時、ふとあることを思い出した。
「そういえば地理の授業の時、リエヴル自身の育った町の話をしていたよね。あまりリエヴルが育ったところの話を聞いたことがなかったなって」
「ああ、そのことね。そうだよね、あまり言ったことがなかったかも。聞きたい?」
「うん、それはもちろん」
少々苦手な面もある友人だが、唯一の友人だ。少しでも彼のことを知りたい。
「ボクの故郷はね、王都から見て東にあって、海に近いから主に魚を採ったり、えっちなお店で成り立っている町なんだ」
「ああ、そう言っていたよね⋯⋯。そういうお店があるから、リエヴルはそういうのが好きなの?」
「友達がそこで働いているからだよ」
思考停止。
「⋯⋯え、今なんて⋯⋯」
「友達がそこで仕事していて、色んなお客さんの話を聞いているうちに興味が湧いたからだよ」
「へ⋯⋯っ、へぇ⋯⋯」
友達? 魔力供給をしてるようなことを仕事にして、不特定多数の人と相手しているってことだよね⋯⋯? 友達⋯⋯友達が⋯⋯。
「そ、その友達って、リエヴルと同い年なの?」
「ちょっと年上だよ。18歳」
「そ、そっかー⋯⋯良かった⋯⋯」
「ボク達と同い年だと思ったの? それとも年下?」
「あ、いや、まぁ⋯⋯」
「大丈夫だよ! ボク達よりも年上だけど、ハジメテは今のボク達よりも年下の時だから!」
「何も大丈夫じゃない⋯⋯!」
頭を抱えた。
何を根拠にそんな自信満々に言えることなのか。そんな楽しそうに言えるものだったか。
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