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先ほどの食べられないと思うぐらいの胸がいっぱいな気持ちはどこに行ってしまったのか。 すっかり気持ちが冷めてしまったミコは、スパイスの香りが漂うカレーを口に入れた。 美味しい。 思わず頬が緩む。 フリグスがやってくれたカレールーに、相応とはいかないものの、最低限ご飯を焦がさない程度の出来になって本当に良かったと思う。 今日一緒の班になったペアもミコと同じ班になった時、あまり良くない顔を見せていたが、たまたま上手くできたものだから、一応は喜んでくれたから、結果的に良かった。 今頃、フリグスも食べているだろうか。少しでもミコの出来を喜んでくれたらいいな。 咀嚼しながら不意に周囲に目を向けた。 天気がいいということで、外でベンチに並んで座っていた。 ミコ達と同様に友人と食事していたり、談笑やボール遊び、杖を剣に見立てて遊んでいる人達も見かけた。 じゃれ合いで杖をぶつけ合っているが、そのうち折れてしまうんじゃないのかと、赤の他人なのに余計な心配をしているミコはふとあるところに目が止まった。 遠くても存在感のある一本の大木。 葉が茂っていて、風に吹かれて擦れ合う音が微かに聞こえる。 ひと休みするにも読書するにも充分にいい木の下に、こちらの様子を窺う生徒がいた。 木の影となって普段見る髪の色よりも色合いが違って見えたが、やや身体付きの良い持ち主には見覚えがあった。 と、その目つきの悪い目と合った時、相手の方が先にサッと目を逸らした。 気のせいかな。 ミコは首を傾げた。 それからカレーを食べようと下を向いて一口食べ、また何となく顔を上げると、また目が合った。 が、また相手が目を逸らし、今度は木の陰に隠れてしまった。

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