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偶然にしてはこんなにも目が合わない。
何かミコに用があるとしか思えないが、あの人物は何の用があるというのだろうか。
「ミコ、さっきからどこを見ているの? 食べちゃうよ」
と言いながら、ミコが言う前に食べていたが、今はそれよりも。
「ねぇ、あそこにいるの、ベンゲルだよね?」
「はぁ? ベンゲルぅ?」
怪訝な顔をして、ミコが見ていた方向を見る。
すると、うわぁ⋯⋯と眉を潜める。
「本当だ。お昼休みにも見ちゃうとか気分最悪。きっと次の授業も補習にされちゃうかも」
「それはベンゲル関係なくされるね⋯⋯」
悲しいことにどんなに努力しても報われず、補習行きだ。
「何が何だか知らないけど、ことあるごとに首を突っ込んでくる奴が変にそわそわしているの気持ち悪いから、見ない振りでもしてよ」
「う、うん⋯⋯」
いつもなら関係ないのに割って入ってきては、馬鹿にしてくるというのに、少し遠いところからこちらの様子を窺っているなんて、本当らしくない。
何かあるから、そういうことをする。だとしたら。
「ぼく、ちょっと行ってくる」
「えっ! ちょっとミコ!」
ベンチに丁寧にカレーを置き、リエヴルの制止を聞かずにミコは駆け出した。
目が合う度に嫌なことを言うし、庶民だけの理由で馬鹿にしてくるし、極力避けたいけど普段の彼らしくない姿だから気になってしまう。
物陰から半分顔を覗かせていたベンゲルと目が合った時、気まずそうに目を逸らした。が、ミコは気にせず声を掛けた。
「ぼくに何か用があるの?」
「⋯⋯⋯」
「さっきからぼくのことを見ていたよね?」
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯ぼくの気のせいだったみたいだね。戻るね」
「待て」
踵を返そうとした足が止まる。
「これ、お前のだろ」
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