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「え? アイツがわざわざ? 庶民の物なんて触りたくないって言いそうなのに? てか、ミコはいつから杖がなかったの?」
「さっきの調理実習の時だったみたい。渡されるまで全然気づかなかったよ」
「調理実習の時ぃ?ミコとは違う班だったのに、なんでミコが忘れていたことに気づいたんだろう。ミコのことを見ていたとしか思えないんだけど。え、キモ⋯⋯」
ぞそっと寒気を覚えたらしいリエヴルは青い顔を見せ、自身を抱きしめる。
やはりリエヴルも同じようなことを思ったようだ。
ミコの行動を見ていたとしか思えないことに、しかし何故見ていたのだろうという疑問は残る。
「わざとミコの杖を盗んで、渡しに来たっていうのもおかしな話だし、どういう風の吹き回し? あ、もしかして、渡してやったお礼にミコの身体を差し出せってことなんじゃ⋯⋯! フリグスなら十歩譲るけど、ベンゲルのやつになんて一歩も譲りたくない! 譲らせない⋯⋯!」
嫉妬を混じえた目でベンゲルが行ったらしい方向を睨めつけていた。
リエヴルじゃあるまいし、ましてや極力庶民とは関わりたくないと思っている相手が身体目的で、そんなことをするはずが、と思ったが、この学園は魔力供給という名の性交が当たり前であり、それを建前に弱みを握らせる魂胆かもしれない。
その1パーセントでもあるかもしれない可能性に、不安を募らせた。
「身体目的だったら、どうしよう⋯⋯」
「ボクが絶対に阻止するからね」
意気込んで言ってくれるが、それでも不安は消えないままだった。
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