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その後、どう帰ったのか覚えてない。 自分の寮に帰った時、びっくりしている様子のリエヴルの姿を見て、酷く安心した。 「何があったの。どうしたの」と訊いてきた友人はミコが何も言わないことで、これ以上訊くのは良くないと思ったようで訊くことは止め、代わりに抱きしめてくれた。 その安心できる温もりに、枯れきったと思った涙がまた溢れそうになった。 ミコのベッドにリエヴルと並んで横になった。 普段ならば怒り、布団から追い出すのだが、今はただその温もりが欲しかった。 「ミコ、目痛くない? 温かいタオルを持ってこようか?」 「⋯⋯⋯」 首を横に振った。 「⋯⋯何もしなくていいから、そばにいて」 「ミコ⋯⋯」 同情するような、こんなしおらしいミコを見たことがないと、驚きと心配が混ざった声を発したリエヴルがぎゅっと抱きしめてくる。 「こうするのはいい?」 「⋯⋯うん、ありがと」 その温かさに包まれながら、ふっと目を閉じた。 と、すぐに目を開けた。 「ねぇ、リエヴル」 「なに? ミコ──⋯⋯っ」 唇に軽く触れる程度のキスをした。 とはいえ、自分からしたことがないキスは触れる程度といっても、押しつけるような形だ。 だが、リエヴルを驚かせたことに変わりなかった。 「え、何、どうしたの、ミコ」 「前からリエヴルはぼくに抱かれたいって言ってたよね」 「う、うん。言ってた、けど」 「今からぼくとペアになろう。ネコでも相手を悦ばせるのはイマイチだったから、タチでもリエヴルのことを悦ばせるのは難しいけど、頑張るね」 「ミコ、何? フリグスとペア解消──」 「その名前を言わないで」 遮る。ハッと息を呑む。 「⋯⋯ごめんね。ごめんね。疲れておかしなことを言っちゃった。寝よう、おやすみ、リエヴル」 「⋯⋯おやすみ、ミコ⋯⋯」 驚いた顔のままの友人から背を向けたミコは、ぎゅっと目を閉じた。 友人にも変なことを言ってしまうだなんて。 これは誰のせい?

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