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97.
あの時から心配してくれている友人。本当は自分がどうにかしてあげたいと思っている。けれども、ネコですらまともでいられない友人は、仕方なくベンゲルに代わりを務めて欲しいと頼んだのだろう。
しかし、本当はベンゲルにでさえも相手役としてやって欲しくないとも思っていることもひしひしと伝わる。
「リエヴルだけでも結構大変だと思うのに、ぼくにまで構っていられないと思う、んだけど⋯⋯」
「本当にな。⋯⋯いや、このオレがしてやるんだから、思う存分悦べよ?」
傲慢な言い方にいつものミコなら嫌に、そもそも来た時から嫌悪感が凄まじいというのに、今はそんな気持ちは微塵もなく、むしろ笑ってしまいたくなる。
「ふふ、お手柔らかにお願いします」
するとどうだろう。度肝を抜かれた顔をするのだ。
変なことを言っただろうかと首を傾げていると、ハッと我に返ったベンゲルが、「まずはキスからな!」と慌てた様子で言ってきた。
が、今度は何故か緊張した面持ちでいるという彼らしくない様につられてミコも緊張してしまった。
肩を掴んだ手にビクッとした時、少し離し、迷うような手つきでいながら、顔を近づける。
今からベンゲルとキスをするんだ。
今までフリグスとしかしたことがないその行為は、リエヴルが言う下手くその部類に入るのか、ここで相性が合わなければ途方に迷ってしまう。
リエヴルにも迷惑をかけてしまうかもしれないけど、合いますように。
祈りを込めて目を閉じた。
「──おや、ここでキスの練習かい?」
不意に差し込んだ影にベンゲルと共にその場に飛び上がりそうなほどに驚いた。
「ルイス先生!」
「⋯⋯いつの間に」
「驚かすつもりはなかったのだけど、気晴らしに中庭で散歩していたら、二人がしているのを目撃したものだから、つい」
にこにこと悪びれる様子もなさそうだったが、そんな先生を許してしまいたくなる。
ベンゲルは驚いた顔をしていたが、どこかし損ねたことに苛立ってようにも見えたのは気のせいだろうか。
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