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100.※フリグス視点
窓の外では遠くで誰かがはしゃいでいるような声が、風に運ばれて聞こえてきた。
それを他人事に思いながら、自身の寮で読書をしていた時だった。
バチッと静電気のような音がした。
目線を少しばかり上げた。
気配が消えた。
辛うじて体内にあっただろう魔力がなくなってしまったということか。
最近、アイツに魔力供給をしてない。
毎日のように注いでやっていた魔力がなくなるのは当然ではあるが、それと同時にヤツの位置が分からなくなるのは不便だ。
あの日、ヤツがあまりにも痛がってそれどころじゃなくなって以来してない。
今日も本当は補習を受けさせるために魔力供給をしなければならなかった。が、また騒がれたら面倒だと思い、補習室に行くのをやめた。
アイツが痛がろうが、泣き叫ぼうが、関係なく注いでやって受けさせればいいのに、何故か躊躇してしまう。
あの日も魔力を無効化してしまう魔道具の性能を知りたいために、補習でもなんでもない日に確かめてみようと思ったものの、それはできず仕舞いだった。
なんでも、感覚を麻痺させる魔法が効いてない、と。
そんなわけがない。ヤツにも言ったが、初級魔法程度あれば話をしていながらも唱えられるものだ。だから、呪文を間違えたとも思えなかった。
今思うと、それも魔道具の効果のせいだったのだろうか。
今までに見たことがない古代文字らしい文字が鈍く光り、浮かんでいたのだ。
それがどんな魔法でも無力化させる効果があるのかもしれない。
厄介なヤツに執着されているな、と思った。
かけたであろう術者の顔を思い出す。
生まれつき魔力を持つ者の特徴である金髪に青い瞳。
この国でもそれとなりにいる出で立ちであるが、常に笑みを張り付かせて自身の手の内を明かさなさそうで、何を考えているのか分からない教師だった。
第一印象で分かりそうな人物であるのに、周りの連中はまるで惚れ薬でも飲まされたかのように惚けた顔をして、ヤツのことを見ている。
あんなのを見て、何が面白いんだか。
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