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108.※フリグス視点
「そういう思いやれないから、ミコ君が嫌がってしまうんだよ」
「お前も結構、大概だけどなっ」
ルイスに杖を突きつける。「火球よ、放て!」
火の塊が杖の先に集中し、ごうっと音を立て、続けざまに二発発射し、豪速球に放たれる。
が、ルイスはすぐに水魔法を唱え、いとも簡単に打ち消してしまった。
水に満たされているこの場所では、特に火の魔法を使っても意味がない。
冷静になれば分かることだ。
アイツの言う通り、ただ苛立ちをぶつけてるだけじゃないか。
普段ミコのことを名字呼びしているくせに、今は当然のように名前呼びしているのが気に食わないというのか。
そんな些細なことで苛立ちを覚えるなんてらしくない。
冷静になれ。
「学年の中で一番優秀である君が冷静さを欠き、きっと君にとっては簡単な魔法でさえも乱れているようだ。何がそんなにも気持ちを揺らがせているのかな」
「お前には関係ない」
一呼吸入れ、口にする。
「流れるる水、清らかな水、鋭い刃となり、切り裂けッ!」
目の前の水が波打ち、それが大きく揺らめいていくうちに大きな音を立てると、先ほどのルイスが唱えた魔法のような水柱となり、その水柱が暴風の如く速く、一直線に向かった。
「穏やかに吹く風よ、荒々しい嵐となり、弾き飛ばせ」
穏やかな口調で唱えた魔法が、フリグスもろとも巻き込んでしまうほどの風が吹き荒れ、発動した水が霧散し、その飛び散った水が雨粒のように降っていき、あっという間に身体を濡らしていった。
煩わしそうに髪をかきあげた。
「もう怒りはぶつけなくてもいいのかい?」
「そんなわけないだろ。殺り足りなさすぎる」
「ふぅん、そう。じゃあ、もっとしてもいいんだよ?」
うっすらと笑った。
余裕そうにしているのが無性に腹が立つ。
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