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109.※フリグス視点

ただ魔法をぶつけても無駄だ。 ただでさえこの場所に来る際に魔力を消費してしまって、疲労が出ている。 むやみやたらに発動するのは得策ではない。 火の魔法は圧倒的に不利だ。 水の魔法も打ち消し合う。 他に何か。 ヤツの動きを止めて仕留める方法は。 「君の怒りは後でいくらでも受け止めてあげるから、私達に祝福をしてくれないかな」 「どういう──」 「水中に浮かぶ泡沫よ、集まり、捕らえよ」 対抗し唱えようとするが前に、水面から浮かび上がった水泡同士がくっつき合い、大きな水の塊となり、フリグスを呑み込む。 水に囚われ、かつ、水中ではまともに声を発することができるわけもなく、息を止めることで精一杯だった。 が、それも間もなく終わりを告げようとしていた。 アラタスが捕らわれた鳥籠が下ろされているようだったが、それすらも見ている余裕もなかった。 この程度の魔法で窒息死してしまうのか。 祝福がどうのこうのと戯言を言う変態教師によって。 なんて惨めなことなのか。 こんなことで終わらせてたまるか。 呑み込まれた際に手から離れてしまった杖を取ろうと手を伸ばす。 「──我らを⋯⋯大地よ、⋯⋯」 外から何かの声が聞こえた。 しかし、水の中では濁った声しか聞こえない。 が、歪む視線の先で巨大な土の塊が鳥籠を掴んでいるようだった。 あの土の塊、どこかで見たことがあるような。 「春の息吹よ、⋯⋯芽吹きよ、その始まりを⋯⋯」 また違う声が聞こえたような気がした。 その瞬間、フリグスの身体に何かが巻き付き、瞬く間に水の塊から外に出され、固い床に投げ出された。 「⋯⋯っ、ごはっ、ごほ⋯⋯っ、ごほごほ⋯っ」 全身の痛みと大量に水を飲んでいたようで、酷く咳き込んでいた。

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