109 / 139
109.※フリグス視点
ただ魔法をぶつけても無駄だ。
ただでさえこの場所に来る際に魔力を消費してしまって、疲労が出ている。
むやみやたらに発動するのは得策ではない。
火の魔法は圧倒的に不利だ。
水の魔法も打ち消し合う。
他に何か。
ヤツの動きを止めて仕留める方法は。
「君の怒りは後でいくらでも受け止めてあげるから、私達に祝福をしてくれないかな」
「どういう──」
「水中に浮かぶ泡沫よ、集まり、捕らえよ」
対抗し唱えようとするが前に、水面から浮かび上がった水泡同士がくっつき合い、大きな水の塊となり、フリグスを呑み込む。
水に囚われ、かつ、水中ではまともに声を発することができるわけもなく、息を止めることで精一杯だった。
が、それも間もなく終わりを告げようとしていた。
アラタスが捕らわれた鳥籠が下ろされているようだったが、それすらも見ている余裕もなかった。
この程度の魔法で窒息死してしまうのか。
祝福がどうのこうのと戯言を言う変態教師によって。
なんて惨めなことなのか。
こんなことで終わらせてたまるか。
呑み込まれた際に手から離れてしまった杖を取ろうと手を伸ばす。
「──我らを⋯⋯大地よ、⋯⋯」
外から何かの声が聞こえた。
しかし、水の中では濁った声しか聞こえない。
が、歪む視線の先で巨大な土の塊が鳥籠を掴んでいるようだった。
あの土の塊、どこかで見たことがあるような。
「春の息吹よ、⋯⋯芽吹きよ、その始まりを⋯⋯」
また違う声が聞こえたような気がした。
その瞬間、フリグスの身体に何かが巻き付き、瞬く間に水の塊から外に出され、固い床に投げ出された。
「⋯⋯っ、ごはっ、ごほ⋯⋯っ、ごほごほ⋯っ」
全身の痛みと大量に水を飲んでいたようで、酷く咳き込んでいた。
ともだちにシェアしよう!

