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111.※フリグス視点

左腕を振り下ろす。 すると、連動しているようでゴーレムも同じ動きをし、ルイスに向かって振り下ろした。 が、すんでのところでルイスが素早く避けたのだ。 クソッと悪態を吐いた。 「ゲファール君はよく感情的になってしまう節があるようだ。得意のゴーレムもこのような場所で召喚してしまっては、本来の力は発揮できないと思うよ」 「うるせぇ!」 その言葉を遮るように薙ぎ払う。 ところが、ルイスには掠りとも当たらなかった。 「流水よ、刃となり、切り裂け」 ルイスが静かな声で発動した水で作られた刃がゴーレムの左肩を切り落とした。 切り離された腕が大きな音を立て、崩れ落ちた後、水に沈んでいった。 「⋯⋯くそっ!」 「素直に返してくれればそうならずに済んだんだよ?」 「お前のものじゃねぇ!」 「⋯⋯ゴーレムに、籠を抱えたままにしておけ」 「⋯! ルーグロリア様──」 「──流れるる水、清らかな水、鋭い刃となり、切り裂け!」 水の刃が天井と鳥籠を繋ぐ鎖を引き裂いた。 「意味のないことを」 「水中に浮かぶ泡沫よ、集まりとて、捕らえよッ!」 高らかに唱える。 すると、フリグスの周りの水面から一つ二つと泡が浮かび上がり、それらがくっつき合い、大きな水の塊となった。 唱えている時点で察し、逃れようとしていたルイスをあっという間に呑み込んだ。 ここまではフリグス自身の仕返しで、今から唱えるのはアラタスに対する強い怒りをぶつける。 「轟く稲妻、天より閃電(せんでん)し、放電せよッ!!」 杖の先がビリッと静電気がした直後、まばゆいほどの稲光が水の塊に走っていき、遅れてつんざくような音を響かせながら放電した。 静かにもがいていたルイスは水面に腹を見せる魚の如く大人しくなった。 ようやく動かなくなったか。 深く息を吐いたフリグスが膝を着いたのと同時に、ルイスを捕らえていた水の塊が落下し、ばっしゃんと水しぶきを上げて、粒となって飛び散っていった。 また不快な水をもろに浴びながら肩で息をしていた。

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