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113.※フリグス視点

ぐっと痛いぐらいに心臓辺りを掴んでいたが、頭を振り、それらを断ち切るように天井と手を繋ぐ鎖に向かって、魔法を発動した。 魔力切れをしたかと思ったが、まだ残っていたようで発動した魔法で鎖が切れた。 切れたことで支えを失ったアラタスが倒れ込みそうになるのをしっかりと抱きとめた。 ほんのりと温かい。 それは抱きしめている相手の体温であり、濡れた影響で低くなったことからそう思うのかもしれないが、確かに自身の腕の中にいると思わせるもので、酷く安心した。 こう思うのも、らしくない。 「⋯⋯フリ⋯、グ⋯ス⋯⋯?」 寝起きのような、いつもより低い声が耳元で聞こえた。 「みっ、ミ⋯⋯コ⋯⋯っ」 一旦引き離し、顔を見やるとぽやっとした顔をしていた。 「フリ⋯⋯グ⋯⋯なんで⋯⋯?」 「なんでって⋯⋯お前、アイツに心底嫌なことをされそうになったんだぞっ! 覚えてないのか」 「⋯⋯⋯?」 ゆっくりと頭を傾ける。 ダメだ。コイツまだ寝ぼけている。 深く、これでもかと深くため息を吐いていたが、その危機感のなさはいつものことかと思うと、何故か抱きしめたくなった。それもとても強く。 「どうしたの⋯⋯?」 「⋯⋯どうもしない」 何故、抱きしめてくるのか分からないといった困惑の声が伝わってくる。 そんなこと、自分でも分からない。

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