115 / 139
115.
「へぇ? やるの?」
ミコから離れたリエヴルも杖を取り出し、ベンゲルに向ける。
あの時の二の舞になるのではと思ったミコは、どちらにせよこれ以上騒ぎになって欲しくないと、何か気を逸らすことはないかとあれこれ思考を巡らせる。
あの時と同じような状況。そうだ!
「ねぇ! また授業以外に魔法を使うと、ルイス先生に取り上げられちゃうよ!」
ただ無意味に杖をぶつけ合っていた二人が、ミコが叫んだことによりぴたっと止まった。
あぁ、良かった。一応止 めてくれて。
ホッと胸を撫で下ろすミコの傍ら、何故か二人は見つめ合ったまま動かない。
目を合わすことすら嫌悪感を示す二人が珍しいこともあるなと思ったが、どこか気まずそうな顔を見せているようだった。
「ルイス、先生⋯⋯ねぇ⋯⋯」
「まぁ⋯⋯前みたいに言われるかもなぁ⋯⋯」
「ミコが覚えてないみたいだから言うけど、ミコを巡って争っていたんだよ? それはもう激しく!」
「お前が言うと、違う意味に聞こえるな⋯⋯。とにかくアラタス、お前に傷一つもなかったことにルーグロリア様が安心するだろうな」
ルイス先生が自分のことで争っていたらしいことに疑問があったが、それよりも。
「ルーグロリア⋯⋯って、フリグスのこと? どうして⋯⋯?」
痛い思いをされて以来、彼とは顔すら合わせなかったのにその後どこで会って、フリグスがミコのことで一安心と思うのだろうか。
というよりも、フリグスがそんな感情を持ち併せているとは到底思えない。
どういうことなのかと答えを求めているミコとは裏腹に、リエヴルは浮かれているようで頬を緩みきった顔を見せ、ベンゲルにいたっては「しょうがない。しょうがないことなんだけどさ」と自分に言い聞かせ、されど顔は不機嫌そうだった。
先ほどのペア代えの話の時といい、ベンゲルはミコのこと──。
今はそのことについて考えるのはよそう。
今は一番気にしなければならないことがあるのだから。
ともだちにシェアしよう!

